デメリット
自己破産には、借金の支払いをしなくてよくなるという大きな利点があります。
しかし、「自己破産」というと否定的なイメージを持たれがちで、「自己破産は考えていない」と最初から選択肢に入れない人が多くいます。
確かに、自己破産にはいくつかのデメリットが存在します。
しかし、世間一般の自己破産に対するイメージには誤解も多く含まれているのです。
ここでは、自己破産に関する間違った情報と実際のデメリットについて解説いたします。
自己破産のデメリット
自己破産のデメリット1.信用情報機関(ブラックリスト)への登録
まず、信用情報に関するデメリットについてです。
任意整理や個人再生と同様に、自己破産も信用情報に記録されます。
つまり、信用情報機関に、自己破産をしたという記録が残るのです。
この記録は、自己破産が終わってから5~10年続きます。
その間はクレジットカードやローンなどの新規契約が難しくなるのです。
自己破産のデメリット2.財産を手放さなければならない
次に、自己破産をすると、一定以上の価値がある財産を処分しなければなりません。
個人再生や任意整理の場合、ローンの残った財産は処分の対象となりますが、ローンを完済した財産については、対象となりません。
一方、自己破産の場合は、価値がある財産であれば、完済した財産も対象となります。
具体的には、以下のようなものが処分の対象となります。
クレジット(立替金)契約で購入した商品
まず、ローンの残った商品は、基本的には清算の対象となります。
例えば、自動車やバイク等は、ローン契約で購入するのが一般的です。
これらの商品は、原則としてクレジット会社に引き揚げられ、返済に充てられます。
ただし、市場価値が低い中古車等は、引揚げの費用で赤字になる場合があります。
この場合では、クレジット会社が引揚げをせずに、そのまま保有できることもあります。
なお、これは、任意整理でも個人再生でも同様です。
99万円超の現金や20万円以上の資産
次に現金です。
99万円を超える現金は、債権者への配当に充てる必要があります。
また、現金以外で資産価値が20万円を超えるもの(預貯金や自動車・バイクなど)は原則として、処分して現金化し、債権者への配当に充てられます。
一方、価値が20万円未満の資産は、処分の対象とはならず、そのまま保持できることが多いです。
他にも生活必需品(家具等)も処分の対象から外されることとなります。
生命保険などの解約払戻金
生命保険には、積み立てタイプと掛捨てタイプの保険があります。
このうち、解約時に戻ってくるお金があり、かつその金額が20万円以上の場合、債権者に配当すべき資産とみなされ、処分対象になります。
保険を解約し、解約返戻金を債権者への配当に充てることになります。
退職金
現在勤務中の会社からの退職金(支給見込額)を8分の1にした金額が20万円以上の場合は、配当すべき資産とみなされ、処分の対象となります。
ただし、実際には、退職前に退職金を受け取ることは難しく、退職金を受け取るためだけに退職させるようなことは現実的でもありません。
そのため、破産手続中に、退職金の8分の1相当額の現金を毎月の給与などから積み立て、それを代わりに債権者への配当に充てることになります。
自己破産のデメリット3.官報への掲載
官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律の制定などを公告するために用いられます。
自己破産をすると、官報に手続きの内容や名前・住所などが掲載されるため、官報をチェックすれば破産をした事実が知られてしまいます。
ただし、一般の人が官報を見ることはほとんどありません。
勤務先の会社が定期的に官報をチェックしているような特別なケースでない限り、現実的に、官報に公告されることで、周囲の人に自己破産をしたことが知られてしまう可能性は低いと言えるでしょう。
自己破産のデメリット4.職業・資格の制限
自己破産には、いくつかの資格や職業に関して、制限があるというデメリットもあります。
具体的には、自己破産の手続きが終わるまで、以下のような職業・資格に制限がかかるのです。
宅地建物取引士
生命保険募集人
公認会計士
税理士
警備員
なお、制限があるのはあくまで自己破産の手続中だけです。
自己破産手続きが完了すれば、制限は解除されることとなります。
また、会社の取締役などの役員についても注意が必要です。
取締役と会社は委任契約を結んでいますが、破産によってこの委任契約が終了するためです。
自己破産を検討する際は、自分の職業や資格に制限がかかるかどうかを事前に確認し、弁護士等と相談しながら慎重に判断することが大切でしょう。
自己破産のデメリット5.保証人に影響を及ぼす
5つ目のデメリットは、保証人への影響です。
保証人とは、主たる債務者が借金を返済できなくなった時に、その返済義務を負う人のことです。
そして、自己破産は、まさに借金を払えなくなった状態そのものです。
ですから、その借金の返済は保証人の責任になります。
つまり、連帯保証人がついている借金がある場合、自己破産をすると、その連帯保証人が返済義務を負うことになってしまうのです。
自己破産のデメリット6.手続き中の郵便物は破産管財人に転送される
自己破産の申立てを行い、破産手続きが開始されると、破産者宛ての郵便物は破産管財人に転送され、その内容がチェックされます。
これは、未申告の債権者がいないか、隠している財産はないかなどを破産管財人が調べ、公正な解決を図るためです。
ただし、これは管財事件に限った話です。
自己破産でも同時廃止手続きという簡単な手続きで進められる場合は、そもそも破産管財人がつかないため、郵便物の転送もありません。
自己破産にまつわるよくある誤解
1. 選挙権がなくなる?
A.いいえ
自己破産しても立候補の権利、投票の権利いずれも制限されません。
2. 年金は受け取れない?
A.いいえ
自己破産しても公的年金の受給権は影響を受けません。
また、返済に充てる必要もありません。
3. 戸籍や住民票に載ってしまう?
A.いいえ
自己破産の情報が戸籍や住民票に記載されることはありません。
4. 生活保護が受給できない?
A.いいえ
自己破産後でも生活保護の申請や受給は可能です。
5.会社を解雇される?
A.原則としてない
自己破産が理由での解雇は原則として違法です。
ただし、前述の職業制限に該当する資格を必要とする場合、就業規則で解雇事由として定めている場合もあることには注意が必要です。
6. 引っ越しや出張に行けない?
A.いいえ
自己破産しても引っ越しや出張は可能です。
ただし、管財事件の際には、居住地等を裁判所や破産管財人に報告する必要がある場合があります。
7. 賃貸住宅の契約ができない?
A.基本的には影響はありませんが、問題が生じることもあります
原則として、自己破産歴があっても、賃貸物件を借りることに影響はありません。
不動産業者は、信用情報を確認できないからです。
ただし、最近では、家賃の支払いをクレジットカード払いに指定しているケースがあります。
このような場合は、契約が事実上困難になる可能性はあります。