特定調停のデメリット
特定調停は、弁護士などの専門家に依頼せずに自力で債務整理を行える点で魅力的な選択肢です。
しかし、手続き面での負担やリスクなど、いくつかの注意点があることも事実です。
特定調停を検討する際は、そのメリットとデメリットを十分に理解した上で、慎重に判断することが大切でしょう。
この記事では、特定調停のデメリットについて詳しく解説します。
特定調停のデメリット
債権者からの取立行為が止まるまでに時間がかかることがある
特定調停の申立を行えば、原則的には債権者からの取立行為は中止されます。
しかし、申立に必要となる各種書類等の作成・準備に時間を要すると、
債権者からの督促が止まるまでに時間がかかってしまうことがあるのです。
このため、弁護士に依頼することで債権者からの取立をすぐに止められる任意整理とは異なり、取立行為が止まるまでに時間がかかる場合があります。
管轄裁判所が申立人の住所地ではない
特定調停の申立は、原則として貸金業者の事務所の所在地を管轄する簡易裁判所に対して行う必要があります。
自己破産や個人再生とは異なり、申立人の住所地の裁判所ではないのです。
ただし、貸金業者の支店の所在地でも大丈夫なケースもあります。
また、複数の債権者に対してまとめて申立を行う場合には、
最寄りの貸金業者の所在地を管轄する簡易裁判所に申立できる場合もあります。
期日には本人が裁判所に出頭する必要がある
特定調停の期日には、平日の日中に本人が裁判所に出頭しなければなりません。
また、基本的には貸金業者との交渉を自分で行う必要があります。
もちろん、裁判所から選任された調停委員が仲裁してくれます。
ですが、調停委員はあくまで申立人と貸金業者の仲裁役にすぎません。
ある意味「中立」の立場なのです。
つまり、申立人の味方をしてくれるわけではないのです
この点は、弁護士や司法書士が依頼人の代理人となり、
依頼人に有利な形で交渉を進めてくれる任意整理とは異なります。
差押えなどが容易に行われる可能性
特定調停が成立すると、調停調書が作成されます。
債権者はこの調停調書により強制執行が可能となります。
このため、調停調書の内容通りに返済ができなくなった場合、
速やかに給料の差押えなどの強制執行がされてしまう危険性があるのです。
本当に返済できるかをよく考えずに特定調停を行うと、後々大変なことになるおそれがあります。
信用情報に事故情報が登録される
これは全ての債務整理に共通することですが、特定調停の手続きを行うと事故情報が残ってしまいます。
その結果、完済から一定期間はローンやクレジットの利用が難しくなります。
調停が成立しない可能性
特定調停は裁判所で行われますが、相手方の貸金業者に和解を強制することはできません。
基本的には相手方との「話し合い」ですので、債権者との合意に至らない場合には調停は不成立に終わります。
ただし、裁判所が相当と認める場合は、職権により当事者双方の申立趣旨に反しない範囲で「調停に代わる決定(いわゆる17条決定)」を出すこともあります。
ですが、債権者はこの決定に異議申立てをすることもでき、これによって調停不成立に終わることもあるのです。
ただし、貸金業者が多忙を理由に特定調停に出席しないことで合意が成立しないようなケースでは、17条決定に応じてくれる場合もあります。
調停委員が必ずしも債務整理に詳しいとは限らない
調停委員は必ずしも債務整理の専門家とは限りません。
ですので、調停の結果が申立人に不利な調停内容になることもありえます。
例えば、特定調停で分割返済の和解を結んだものの、改めて借金額を調べてみたら既に支払い済みで、さらに過払い金が発生していたというケースも少なくありません。
また、取引の途中からの取引履歴に基づいて借金を計算していることや、将来利息を付加した和解をしていることもあります。
さらに、過払い金が発生しているのに債権債務なしの調停がされることもあります。
このようなケースでは、申立人の負担が大きくなってしまいます。
取引年数が浅い場合や金利の低い借金は減額が難しい
取引年数が浅い場合や、もともと金利の低い借金では、あまり減額を期待できません。
ただし、このような場合でも将来利息の免除・引き下げや返済月額・回数の見直しは可能な場合が多いです。
そのため、ケースバイケースではありますが、従来よりは返済が楽になるでしょう。
しかし、「引直し計算」後の借金をさらに減額することは困難です。
「引直し計算」後の借金は法的にも支払義務があるため、それ以上の減額には応じてもらえないのが実情なのです。
まとめ
特定調停は、債務整理の選択肢の一つですが、いくつかの注意点があります。
申立に時間がかかると取立が止まるまで時間を要したり、管轄裁判所が住所地ではなかったりと、手続き面での負担があるのです。
また、調停が不成立に終わったり、調停委員が債務整理の専門家ではないために不利な内容になったりするリスクもあります。
特に、取引年数が浅い場合や金利の低い借金では、大幅な減額は期待できません。
強制執行のリスクや信用情報への影響も無視できません。
このように、特定調停にはメリットだけでなくデメリットもあるため、弁護士などの専門家に相談した上で、慎重に検討する必要があるでしょう。