自己破産ができる条件
自己破産を検討している方にとって、借金が免責されるかどうかは大きな関心事です。
しかし、自己破産の手続きを経ても、全ての借金が免除されるわけではありません。
自己破産後も返済義務が残る非免責債権や、免責が認められない免責不許可事由について理解しておくことが重要です。
本記事では、自己破産が出来る条件を3つに分けて、
- おける支払不能の定義
- 非免責債権の種類
- 免責不許可事由の内容
について詳しく解説します。
自己破産ができる条件(1)|支払不能であること
支払不能とは?
自己破産ができる条件の1つ目は、支払不能であることです。
自己破産における「支払不能」とは、簡単に言えば、現在の資産や収入で将来の全ての借金を返済できない状態のことを指します。
具体的には、破産法第2条第11項で「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものを一般的かつ継続的に弁済できない状態」と定義されています。
破産法第15条により、自己破産手続きを開始するためには支払不能であることが必要です。
裁判所は、提出された書類や尋問結果を総合的に判断し、支払不能に該当するかどうかを決定します。
支払不能かどうかは個々のケースによりますが、次の要素が考慮されます。
まず、収入は現在および将来の収入見込みが重要です。
次に、財産として不動産、預金、有価証券などの価値が評価されます。
また、借金の総額および各債権者の債権額も重要な要素です。
最後に、現在の収入で借金を返済できる可能性も考慮されます。
支払不能が認められるケースの例
- 収入が少なく、借金返済に充てられる金額が限られている場合
- 財産がほとんどない、またはその価値が非常に低い場合
- 借金の額が膨大で返済の見込みが全く立たない場合
- 病気や失業などの理由で安定した収入が得られない場合
支払不能と認められないケースの例
一時的に収入が減少しているが、将来的に収入が増える見込みがある場合
財産を隠している、または故意に浪費している場合
意図的に借金を増やしている場合
根拠法令
債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
破産法第15条
自己破産の条件(2)|免責不許可事由に該当しないこと
免責不許可事由とは
自己破産の手続きを進める中で、免責が許可されない場合もあります。
これを「免責不許可」といい、その原因となる行為を「免責不許可事由」と呼びます。
免責不許可事由に該当すると、裁判所から免責が認められず、引き続き借金を返済し続けなければなりません。
もちろん、借金が完済されない限り、信用情報から事故情報が消えることもありません。
したがって、完済をするまでの期間はブラックリストの状態が続きます。
なお、一定期間が経過すれば時効援用が可能です。
免責不許可事由の主な種類
免責不許可事由は、破産法に詳細に規定されています。
主なものとして以下が挙げられます。
- 財産の隠匿や損壊:破産財団に属する財産を隠したり、わざと壊したりする行為
- 債権者を害する行為:債権者に不利益を与えるような財産処分
- 虚偽の申告:裁判所を欺くために財産や収入について虚偽の申告をすること
- 破産手続きへの非協力:破産手続きに協力しない行為
- 浪費やギャンブル:収入に見合わない浪費やギャンブルを繰り返す生活
- 債権者への偏頗弁済:特定の債権者に対してだけ有利な返済行為をすること
- 過去の免責:過去7年以内に自己破産をしたことがある場合
これらの行為が認められると、免責は認められません。
そのため、自己破産を考える際には、これらの行為を避けることが重要です。
詳しくは免責不許可事由について書いた記事をご覧ください。
根拠法令
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
破産法第252条
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
自己破産の条件(3)|借金が非免責債権ではないこと
非免責債権とは?
非免責債権とは、自己破産手続きを経ても返済義務が免除されない債権のことです。
自己破産後も、これらの債権については支払いを続ける必要があります。
つまり、「借金が非免責債権ではない」という条件は、自己破産の手続きを進める上で非常に重要です。
すべての借金が免除されるわけではないため、注意が必要です。
なぜ全ての借金が免除されないのか?
全ての借金が免除されない理由は、社会的な観点からの公平性や道義的な責任に基づいています。
まず、公平性の観点から、税金や養育費などの社会的義務に基づく債務は、他の納税者や子供のために免除の対象外とされています。
次に、道義的な責任として、故意に他人に損害を与えた場合などは、その責任が免除されるべきではないと考えられます。
非免責債権の主な種類
非免責債権には以下のようなものがあります。
税金、社会保険料などの公的料金
税金や社会保険料などの公的料金は、免責の対象外です。
これらは社会的な義務として支払う必要があります。
養育費、婚姻費用
養育費や婚姻費用も免責されません。これらは家族の生活を支えるための重要な費用です。
故意または重大な過失による損害賠償金
故意や重大な過失による損害賠償金も免責されません。
他人に与えた損害の責任を負う必要があります。
罰金
罰金も免責の対象外です。
法律に違反した場合の罰金は支払わなければなりません。
このように、非免責債権にはさまざまな種類があります。自己破産を検討する際は、これらの債権についても十分に理解しておくことが重要です。
詳しくは非免責債権について書いた記事をご覧ください。
根拠法令
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
破産法第253条
一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
まとめ
自己破産は、支払不能の状態にある債務者が借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
ただし、全ての借金が免責されるわけではありません。 非免責債権と呼ばれる、税金、社会保険料、養育費、損害賠償金、罰金などは、自己破産後も支払い義務が残ります。
また、財産の隠匿、虚偽の申告、破産手続きへの非協力など、免責不許可事由に該当する行為があった場合、免責が認められないこともあります。
自己破産を検討する際は、弁護士などの専門家に相談し、自分の借金の内容や返済状況を正確に把握した上で、慎重に判断することが重要です。