非免責債権
自己破産を検討している方にとって、借金が免責されるかどうかは大きな関心事です。
しかし、自己破産の手続きを経ても、全ての借金が免除されるわけではありません。
税金、養育費、悪意による不法行為の損害賠償金、罰金など、自己破産後も返済義務が残る非免責債権があることを理解しておく必要があります。
本記事では、非免責債権の種類や、なぜ一部の借金が免責されないのかについて詳しく解説します。
自己破産を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
非免責債権とは?
非免責債権とは、自己破産手続きを経ても返済義務が免除されない債権のことです。
自己破産後も、これらの債権については支払いを続ける必要があります。
つまり、すべての借金が免除されるわけではないため、注意が必要です。
kこのように、「借金が非免責債権ではない」という条件は、自己破産の手続きを進める上で非常に重要です。
なぜ全ての借金が免除されないのか?
全ての借金が免除されない理由は、社会的な観点からの公平性や道義的な責任に基づいています。
まず、公平性の観点からです。税金や養育費などの社会的義務に基づく債務は、他の納税者や子供のために免除の対象外とされています。
次に、道義的な責任として、故意に他人に損害を与えた場合などは、その責任が免除されるべきではないと考えられます。
非免責債権の主な種類
非免責債権は破産しても免除されない債務のことです。
これらは、破産法第253条に列挙されています。
ここでは、それぞれの非免責債権について紹介していきます。
租税等の請求権
国や地方自治体への税金は、非免責債権です。所得税、法人税、消費税、地方税などが含まれます。
悪意による不法行為の損害賠償請求権
まず、故意に他人に損害を与えた場合の損害賠償金等です。
例えば、窃盗や詐欺、勤務先の現金横領による損害賠償は、非免責債権に該当します。
これらは免責の効力が及びません。
なお、ここでの「悪意」は、単なる故意ではなく、積極的な害意を指します。
例えば、不貞行為による慰謝料は、不法行為による損害賠償です。
ただし、多くの場合、免責の対象となります。
重大な過失による人身損害の賠償請求権
交通事故などで他人に怪我をさせた場合の損害賠償金も非免責債権です。
人の生命や身体を害する不法行為は、加害者への制裁として非免責債権とされています。
このように、重大な法益を侵害する不法行為に基づく賠償請求は、非免責債権です。
養育費、婚姻費用
養育費(民法第752条等)や婚姻費用(民法第760条)は非免責債権です。
婚姻費用は、結婚から生じる費用で、破産しても支払いは続きます。
養育費は子供の生活に必要な費用で、食費、教育費、医療費などが含まれます。
雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権
従業員への未払い賃金や退職金も非免責債権です。従業員の給料は、財団債権として優先的に弁済される場合や、労働者健康安全機構の立替払制度が適用される場合があります。
罰金
犯罪によって科せられた罰金も非免責債権です。罰金、科料、追徴金、過料の請求権は免責されません。
債権者名簿に記載しなかった請求権
破産手続き開始までに申告されなかった債権は非免責債権です。
つまり、債権者名簿に記載されていない債権については、破産者がわざと外した場合や、過失で記載を怠った場合も含め、免責されません。
破産者が一部の債権者を故意に記載しなかった場合は、免責不許可事由となります。
ただし、債権者が破産手続きの開始を知っていた場合は、記載がなくても免責の対象になります。
まとめ
自己破産は借金の返済義務を免除してもらう手続きです。
しかし、全ての借金が免責されるわけではありません。
非免責債権と呼ばれる、税金、養育費、悪意による不法行為の損害賠償金、罰金などは自己破産後も支払い義務が残ります。
非免責債権は、社会的公平性や道義的責任に基づいて免責の対象外とされています。
自己破産を検討する際は、自分の借金が非免責債権に該当するかどうかを確認し、返済計画を立てる必要があります。
また、債権者名簿への記載漏れにも注意が必要です。
自己破産の手続きを進める前に、弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
根拠法令
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。
ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。一 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
四 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
破産法第253条