自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2種類があることをご存知ですか?
同時廃止事件は手続きが簡単で費用も安くなる一方、管財事件は手続きが複雑で時間と費用がかかります。
この記事では
- 同時廃止事件と管財事件の違い
- 同時廃止事件と管財事件の期間、
- 同時廃止事件と管財事件にかかわるお金
の3つの観点から詳しく解説します。
自己破産を検討している方は、ぜひ参考にして、自分に最適な方法を選びましょう。

自己破産の手続きには2種類ある?同時廃止と管財事件の違い
同時廃止事件は「手続きの開始と同時に終了し、免責される手続き」です。
一方、管財事件とは「財産を管理して売却や換価の処分を行う手続き」のことです。
また、管財事件にも2種類あり、財産が少ないことから比較的短期間で終了する少額管財事件と、資産が多いため時間のかかる通常管財事件があります。
以下で詳しく解説します。
同時廃止事件とは?
自己破産では、通常は破産者の財産を売ってお金に換え、それを債権者に分配する手続きが必要です。
これを「破産手続き」と言います。
しかし、破産者が一定以上の財産を持っていない場合、資産を売却や清算しても債権者にお金を返せません。
そのため、破産手続きは開始と同時に終了します。これが「同時廃止事件」です。
つまり、同時廃止事件とは、破産管財人が選ばれず、破産手続きが開始されたと同時に終了される破産手続きのことを指すのです。
管財事件とは「破産管財人が選任される自己破産手続き」
一方で、「管財事件」とは、破産管財人が関与して財産の価値を評価し、債権者にお金を分配したり、破産者に免責を認めるかどうかの調査を行う手続きです。
- 売却できる財産がある場合
- 借金を作った理由に問題がある場合
などには、「管財事件」が選ばれます。
管財事件では、破産手続きが始まると同時に、破産を申し立てた人の財産を管理し、必要なら売却する役割を担う人を選びます。
この人を「破産管財人」と呼びます。
通常は、破産者や主要な債権者とは関係のない弁護士が選ばれ、この人たちの報酬に充てるために、予納金を多く納付する必要があります。
管財事件になるケース
それでは、どのような場合に管財事件になるのでしょうか。
まず、「財産があり、それを売却や清算する必要がある場合」が考えられます。
たとえば、住宅を所有している人が自己破産をする場合です。
持ち家がある場合、それを処分して得たお金を債権者に分配する必要があります。
そのため、裁判所は管財事件として取り扱う必要があります。
また、「免責を認めるために詳細な調査が必要な場合」も考えられます。
たとえば、裁判例において免責が認められた場合、貸した側である債権者は、お金を返してもらえずに困ってしまいます。
しかし、もし債務者が自己破産をすることが分かっていながらお金を貸していたり、詐欺をしていたり、特定の債権者にだけ有利な条件で借金を返済をしていた場合など、これらのズルい行為があると、お金を返してもらえない債権者にとっては不公平が生じる可能性があります。
そのため、破産法では免責を認めないケースを法的に規定しています。
これらの事情は、「免責不許可事由」と呼ばれています。
この免責不許可事由に該当する可能性があり、免責を認めるために詳細な調査が必要な場合、管財事件となることが考えられます。

管財事件なのに費用が安い?少額管財事件とは
とはいえお金がないから自己破産をするのに、申し立てに数十万円ものお金が必要だと手続きが取れないという方もいるでしょう。
そのような方におすすめなのが、「少額管財事件」という方法です。
「少額管財事件」は、通常管財事件よりも手間や費用が軽くなります。
例えば、管財事件が半年から1年かかるのに対し、少額管財事件では約3か月で手続きが終わることが一般的です。
また、通常の手続きに比べて費用が減り、特に個人や小さな会社にとって利用しやすくなっています。
実際、自己破産手続きの約70%が「少額管財事件」として進められています。
ただし、「少額管財事件」は全国の裁判所すべてで行われているわけではなく、一部の裁所でしか行われていません。
また、この手続きを利用するためには、申し立て前に弁護士に相談する必要がある場合が多いので、その点も注意が必要です。
同時廃止と管財事件の主な違い
違い①:管財事件では手続きが複雑になる
通常の管財事件では、破産者の財産調査や債権者への配当手続きがあり、複雑な手続きが必要です。
管財事件の手続きは通常、以下のようなステップで進行します。
①申し立てと破産審尋
破産を申し立てた後、破産審尋と呼ばれる裁判官との面談があります。その後、裁判所が破産管財人を選びます。
②破産手続きの開始決定
破産審尋が終わると、裁判所が破産手続きを開始するかどうかを決定します。
③財産の調査と債権者集会
破産管財人が破産者の財産と債務を調査し、債権者に進捗状況を報告するための債権者集会が開かれます。状況によっては債権者集会が長引くことがあり、その場合は2回目以降も開催される可能性があります。
④債権者への報告と配当手続き
債権者集会での報告が終わり、債権者への配当が残っていれば、破産管財人がその手続きを行います。
⑤免責審尋から終了まで
最後に、免責審尋と呼ばれる裁判官との面談を経て、裁判所によって破産手続きの終了が確定します。
一方で、同時廃止事件では②~④の手続きが省略されるため、管財事件と比べると手続きが簡単になる傾向があります。
違い②:自己破産手続きの終了までにかかる期間が異なる
違い①で述べた通り、同時廃止事件と管財事件では、手続きの複雑さが大きく違います。
そのため、手続き開始から終了までの期間も大きく異なることとなります。
【通常の管財事件】
- 破産手続き開始から破産管財人の選任まで:約1ヶ月
- 債権者集会までの期間:約2ヶ月から3ヶ月
- 債権者集会以降の手続き:約2ヶ月から3ヶ月
- 免責審尋から終了まで:約2ヶ月から3ヶ月
総合的な期間の目安:最短で半年から1年
【同時廃止事件】
- 破産手続き開始から開始決定まで:約1ヶ月
- 免責審尋から終了まで:約2ヶ月から3ヶ月
総合的な期間の目安:約3ヶ月から4ヶ月
【少額管財事件】
- 破産手続き開始から開始決定まで:約1ヶ月
- 免責審尋から終了まで:約3ヶ月から4ヶ月
総合的な期間の目安:約5ヶ月から6ヶ月
違い③:裁判所に納める費用が異なる
管財事件と同時廃止事件の違いで最も大きいのは、予納金が大幅に異なるという点です。
予納金は、裁判所が破産手続きを進めるために必要な費用で、裁判所に納める印紙代や破産管財人に与える報酬などが含まれます。
この点、同時廃止事件の場合は、破産管財人が付かないため、金額が安くなります。
一方、管財事件の場合は、破産管財人の報酬を支払う必要があるため、金額が大きく異なるのです。
- 予納金の違い
通常管財事件では、裁判所手数料や破産管財人の報酬が含まれた予納金が必要です。
同時廃止事件では、破産管財人が関与しないため、その分予納金が少なくなります。
- 予納金の内訳
申立手数料(収入印紙)、予納郵券(郵便切手)、官報公告費用(予納金)、引継予納金(破産管財人の報酬)などが含まれます。
【予納金の具体的な内訳(東京地方裁判所の例)】
申立手数料 | 同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財) すべてで一律1,500円 |
予納郵券 | 同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財) すべてで4,200円(大型合議事件の場合は6,000円) |
官報公告費用 | 同時廃止・少額管財・通常管財(特別管財)すべてで異なる 例えば同時廃止の場合は11,859円 |
引継予納金 | 負債額に応じて異なり、5000万円以下であれば 50万円というように決定される |
引継予納金
負債額 | 引継予納金 |
5000万円未満 | 50万円 |
5000万円~1億円未満 | 80万円 |
1億円~5億円未満 | 150万円 |
5億円~10億円未満 | 250万円 |
10億円~50億円未満 | 400万円 |
50億円~100億円未満 | 500万円 |
100億円以上 | 700万円 |
まとめ
自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
同時廃止事件は、手続きの開始と同時に終了し、免責される手続きです。
一方、管財事件は、破産管財人が関与して財産の調査や債権者への配当を行う手続きで、通常の管財事件と少額管財事件があります。
同時廃止事件と管財事件の主な違いは、手続きの複雑さ、終了までにかかる期間、裁判所に納める費用の3点です。
同時廃止事件の方が、手続きが簡単で、終了までの期間が短く、費用も安くなる傾向があります。
自己破産を検討する際は、これらの違いを理解し、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。