個人再生手続きにおいて、裁判所が選任する個人再生委員が選ばれることがあります。
では、個人再生委員とはどのような役割を担う人物なのでしょうか。
本記事では、
- 個人再生委員がどのような人か
- 個人再生委員が選任されるケース
- その主な業務
- 選任された際の影響
について解説します。
個人再生委員とは何か
個人再生委員は、申立人に公正な立場から助言や監督をするために裁判所が選任する人物です。
債務者の財産や収入状況を調べ、再生計画案の作成に必要な指示を行うなど、手続きが公正かつ適正に進むための重要な役割を担っています。
通常、弁護士がこの役割に選ばれます。
申立人が誠実に手続きを進められるようサポートするだけでなく、裁判所と申立人の間で情報を橋渡しする役割も果たします。
例えば、財産調査では、申立人が全ての資産を正確に申告しているかを確認し、手続きの信頼性を保つ役割も担います。
これにより、手続き全体の透明性が高まるのです。
個人再生委員が選任されやすいケース
個人再生委員が選ばれるケースは、裁判所の判断によって異なります。
選任基準は明確に定められていないため、裁判所の運用方針や個別の事情により選任の有無が決まります。
以下に、選ばれやすいケースを挙げます。
代理人として弁護士や司法書士がいないケース
まず、申立人が弁護士を代理人に選任していない場合です。
このような場合は、申立人の法律知識不足等により、手続きが円滑に進まない可能性があります。
また、再生計画の実現可能性や債権者との間の公平性を判断するためにも、個人再生委員の選任が必要となります。
そのためこのようなケースでは、裁判所は申立人の再生計画が現実的で債権者にとっても公正であるかを確認するため、個人再生委員を選任することがあります。
一方、弁護士や司法書士を代理人としている場合、裁判所が個人再生委員を選任しないこともあります。
代理人がいれば、再生計画の立案に専門家が携わっています。
また、財産調査も行われていることが期待されるでしょう。
そのた、え個人再生委員が不要と判断されることもあるのです。
財産や収支状況に応じた選任のケース
次に、申立人の返済能力に対して、裁判所が疑問を抱いているケースです。
そもそも、個人再生では、減額された借金を返済しなければなりません。
この返済が可能かどうかを確認するため、裁判所に毎月の家計収支状況を提出する必要があるのです。
返済能力に疑問がある場合、、申立人の家計収支状況を詳細に確認する必要があります。
そのため、個人再生委員が選ばれ、返済計画の現実性を検証する役割を担うのです。
これは、債権者に対して申立人が適切に返済できるかを証明するためにも重要です。
また、申立人が私的財産の把握が困難な場合にも、選任されることがあります。
たとえば、申立人が複数の収入源を持っていたり、特殊な資産を保有しているなど、
財産状況が複雑だと裁判所が判断したときに選任されることがあります。
このようなケースでは、個人再生委員が財産の調査や手続きの進行を監督することで、手続き全体の透明性と公正さを保つ必要があります。
つまり、申立人の収支状況や財産の正確な把握が難しいケースでは、個人再生委員を選任することにより、手続きをより確実に進めようとするのです。
個人再生委員の役割
個人再生委員は、個人再生の手続きを進める中で、裁判所のサポートや申立人の監督を行う重要な役割を担っています。
また、個人再生委員は手続き全体を監視し、問題が発生しないよう対応する役割もあります。
これにより、裁判所は安心して手続きを進められるのです。
個人再生委員の主な業務は、収支・財産の調査、債務調査、再生計画案の精査などです。
例えば、申立人が財産に関する資料を提出していない場合には、個人再生委員がその点を指摘し、資料の追加提出を求めることがあります。
それでは、それぞれの業務について具体的に説明しましょう。
収支と財産の調査
個人再生手続きでは、申立人の財産額と圧縮された債務額を比較して、最終的な返済額が決まります。
そのため、申立人の財産がどの程度あるかを正確に把握することが非常に重要です。
また、個人再生が可能かを判断するため、申立人の収支を把握する必要もあります。
この調査により、申立人が現実的な返済計画を立てることが可能になります。
例えば、申立人が月々の支出を過少に見積もっている場合には、個人再生委員が実際の支出額を確認し、返済計画に反映することで、計画が破綻しないようにします。
このような調整が行われることで、再生計画がより現実的なものになります。
債務の調査
個人再生手続きでは、申立人が債権者に対してどのくらいの借金を抱えているかを正確に把握することが不可欠です。
しかし、申立人と債権者の間で借金の額に関する主張が食い違うこともあります。
例えば、申立人が「債権者Aから100万円を借りている」と申告しても、債権者Aが「実際は200万円の借金がある」と主張する場合もあります。
こうした場合には、個人再生委員が第三者として債務の調査を行い、どちらの主張が正しいのかを確認する必要が生じるのです。
このような調査により、債務の正確な額が確定され、再生計画に反映されます。
これにより、手続きが公平に進められます。
個人再生委員の調査によって、裁判所は正確な情報に基づいて判断を下せるのです。
再生計画案の精査
個人再生の手続きが進む中で、申立人が提出する再生計画案が現実的で実行可能であるかを確認することが重要です。
個人再生委員は、申立人が作成した再生計画案を精査し、その内容の適正性を判断します。
再生計画案が現実的でなかったり、債権者に不利益をもたらす可能性がある場合には、個人再生委員が計画の修正を勧告することもあります。
例えば、申立人が収入の増加を見込んで楽観的な計画を立てている場合、個人再生委員がその計画を現実的な範囲に修正するよう勧告します。
これにより、再生計画が実行可能で、手続き後も安定した返済が期待できるものになります。
履行テストが実施されることも
なお、この間に履行テストが行われることがあります。
履行テストとは、申立人が再生計画に基づいて返済を続けられるかのテストです。
裁判所はこの履行テストを通じて、申立人の計画通りの返済能力を判断します。
履行テストの期間は通常3~6ヶ月で、この期間中に申立人は返済額相当のお金を裁判所に納める必要があります。
これにより、裁判所は申立人の返済能力を客観的に評価します。
補足として、履行テストの結果は裁判所の判断に大きな影響を与えます。
申立人がテスト期間中に適切に返済できることを示せば、再生計画が承認されやすくなります。
逆に、履行テストに失敗した場合は、再生計画の修正や、最悪の場合は手続き自体が進まない可能性もあります。
例えば、申立人がテスト期間中に収入減少や予期せぬ支出で返済に困難を感じた場合、
その点が再生計画に反映される可能性があります。
個人再生委員が選任されるとどうなるか
では、個人再生委員が選任されるとどのような影響があるのでしょうか?
まず、委員との面談が必要になります。
また、裁判所には予納金を追加で送金する必要が生じます。
さらに、個人再生委員が付いた場合は、手続きが長期化する可能性があります。
一つずつ、詳細に解説していきます。
面談が必要になる
個人再生委員が選ばれた場合、申立人はまず面談を受けることになります。
日程調整のうえ、個人再生委員の弁護士事務所での面談が必要となるのです。
これは、申立人の収入や支出、財産状況について詳しく聞き取るためです。
適切な再生計画を立てるために、重要な手続きの一環なのです。
この面談では、申立人が個人再生に至った経緯や現在の経済状況が詳細に調査されます。
また、再生計画案の作成について、法律的な観点からアドバイスが提供されます。
これにより、再生計画が現実的かつ実行可能であるかが判断されます。
予納金の納付が必要
個人再生委員が選任されると、裁判所に予納金を支払う必要があります。
予納金は個人再生委員の費用として、一般的に15万円から20万円程度かかります。
この予納金の支払いは、手続き全体に影響を与えることとなります。
例えば、申立人が予納金を用意するのに時間がかかる場合、その間に手続きが進まないこともあります。
また、分割予納金兼積立は、履行テストの一環を占めています。
予納金が積み立てられない場合は、再生計画案を認可されないリスクがあります。
そのため、予納金の準備は確実に、早めに行うことが重要です。
手続きの遅延
また、個人再生委員が選任されることで、手続きの開始決定が遅れる傾向があります。
通常、申立てから1~2ヶ月で開始決定が下されます。
ですが、個人再生委員が関与することで、手続きが長引く可能性があります。
個人再生委員の選任により手続きが遅れる理由には、委員が提出する報告書や意見書の作成に時間がかかることが挙げられます。
このような遅延は、申立人にとって心理的な負担となることがあります。
ただし、最終的には手続きがより確実かつ公正に進むために必要な時間です。
まとめ
個人再生委員は、裁判所が個人再生手続きを進める中で、申立人に公正な立場から助言や監督をするために選任する弁護士です。
個人再生委員が選ばれるケースは、裁判所の判断によって異なります。
ただし、申立人に代理人がいない場合や、財産・収支状況が複雑な場合などは選任されることが多いと言えます。
主な業務は、収支・財産の調査、債務調査、再生計画案の精査などで、手続きが適正かつ公正に進むよう支援します。
個人再生委員が選任されると、申立人は面談を受け、予納金を納める必要があります。
また、手続きの開始決定が遅れる傾向もありますが、最終的には手続きがより確実かつ公正に進むためのプロセスと理解することが重要です。