任意整理とETCカード
ETCカードは、便利な高速道路等の利用のためには欠かせないツールになっています、
実際、日本各地の料金所で「ETC専用」と書かれた場所をよく見かけます。
また、首都圏の高速道路では、ほとんどのゲートがETC専用になっていて、ETCカードを持っていないと不便に感じることでしょう。
さて、ここで気になるのは、
- 任意整理すると、ETCカードは使えなくなってしまうのではないか、
- 新たに作ることが出来ないのではないか
という心配です。
この点、ETCカードを任意整理した場合、カードは利用できなくなります。また、任意整理の対象にしなかったカードも利用が停止される恐れは否定できません。
ただし、ETCカードには代替手段が存在しています。そのため、それらの方法を利用することで悪影響を抑えられるでしょう。
本記事では、
任意整理をするとETCカードはどうなるか
任意整理中にETCカードを利用する代替方法
について解説します。
ETCカードとは
ETCカードは、日本の高速道路や一部の有料道路で利用できる、非常に便利な決済手段です。
このカードを車両に設置することで、料金所で停車することなく自動的に通行料金を支払うことができます。
また、ETCカードを利用することで、料金所での待ち時間を大幅に短縮できます。
時間の節約になるだけでなく、現金の取り扱いも不要になります。
つまり、ETCカードは現金を使わずにスムーズに道路を利用できるシステムなのです。
ETCカードは、家族旅行やドライブ、運送業や営業車の利用など、さまざまな場面で活躍し、より快適な移動を実現してくれます。
債務整理をするとETCカードの使用ができなくなる?
債務整理を行うと、信用情報機関に「事故情報」が登録されます。
このため、クレジットカードの利用が制限されるのが一般的です。
ETCカードもクレジットカードと同様に、利用ができなくなる可能性があります。
では、債務整理後にETCカードを使用するにはどうすればよいのでしょうか。
信用情報への事故情報登録の影響
債務整理を行うと、クレジットカードの利用が制限されるのは、信用情報の影響です。
信用情報機関は、借り入れや返済状況などを詳細に記録しています。
支払いが遅れたり、債務整理をすると、それが「事故情報」として登録されます。
この事故情報が登録されると、新たな借り入れやローンの審査が厳しくなります。
この状態は一般的に「ブラックリスト」と呼ばれる状態です。
この制限は、通常5年以上続くことが多いです。
ただし、事故情報が抹消されても、収入や資産の状況によって審査が通らないこともあります。
債務整理をしたらETCカードはいつ使えなくなる
債務整理の対象となった債務は、契約を解除されます。
例えば、消費者金融からのキャッシングはできなくなります。
また、クレジットカードの利用も継続できません。
ETCカードも例外ではなく、債務整理の対象とすれば、利用停止、契約解除されます。
つまり、ETCカードが使えなくなるのです。
ただし、債務整理には、「任意整理」と「法的整理」の2種類があります。
法的整理では、自己破産や個人再生が含まれ、これらの手続きでは全ての借金が対象となるため、ETCカードを残すことはできません。
一方、任意整理の場合は特定の債務のみを対象とすることも可能です。
そのため、ETCカードを対象とするかしないかで、話が変わります。
任意整理の対象とする場合
任意整理を行うと、ETCカードの利用がいつから停止されることとなります。
停止までの期間は、「任意整理の対象となってから1~2週間程度」が目安です。
具体的には、債務整理を開始すると、弁護士や司法書士が「受任通知」をクレジットカード会社に送付します。
この通知は、弁護士や司法書士が、債務者の代理人であることを伝えるものです。
また、同時に、債務者が債務整理に入ったことを通知するものでもあります。
そのため、クレジットカード会社はこの通知を受け取ると、クレジットカードの解約手続きを始めます。
この処理が完了するまでには1~2週間かかるということです。
なお、1~2週間はカードが停止しないということは、使えるということでもあります。
ですが、債務整理をすることを知っていながらカードを使い続けることは、債務整理をできない理由にもなりかねません。また、詐欺罪や窃盗罪に問われる可能性さえあります。
そのため、債務整理の開始後にカードの利用をするのは絶対に避けるべきです。
任意整理の対象外の場合
上記の項目では、任意整理の対象としたカードは停止すると言いました。
一方で、任意整理でETCカードを対象外にすることも可能です。
この場合、ETCカードは、直ぐには強制解約や利用停止にはなりません。
しかし、いつまでも利用できるとは限りません。
信用情報は、更新時等にもチェックされることがあるためです。
他の借金の任意整理を開始したという事実は信用情報機関に記録されるため、クレジットカード会社が定期的に信用情報を確認する際に影響が出ることがあります。
信用情報の更新タイミングで事故情報が確認されると、ETCカードの利用限度額が下がったり、新規契約が難しくなることもあります。
クレジットカードの新規契約が難しくなる
債務整理を行うと、新しいクレジットカードの契約が難しくなります。
これは、債務整理の情報が「信用情報」として登録されるためです。
信用情報とは、借り入れや返済の履歴を記録したもので、金融機関はこれを基に審査を行います。
事故情報が登録されている間は、審査が厳しくなり、新しいクレジットカードの発行やローンの承認が難しくなります。
したがって、債務整理後は、信用情報がクリアになるまで新規契約が困難となるのです。
債務整理後にETCカードを使う方法
(1) 信用情報の回復を待つ
債務整理後、ETCカードを再び利用するには信用情報の回復を待つ方法があります。
債務整理の種類によって信用情報の登録期間は異なります。
一般的に、消費者金融やクレジットカードの債務整理の場合、事故情報は約5年間記録されます。
一方、個人再生や自己破産の場合は、銀行や労金などの金融機関が関与した場合、7年間登録されることが多いです。
信用情報機関は定期的に情報を交換しているため、たとえ債務整理の対象に含まれていない金融機関であっても、事故情報が確認される可能性があります。
そのため、信用情報の回復には以下の期間を見込む必要があります。
- 任意整理の場合:約5年
- 個人再生や自己破産の場合:約7年
(2) ETCパーソナルカード(ETCパソカ)を作る
債務整理後でも利用可能なカードとして「ETCパーソナルカード(通称:ETCパソカ)」があります。
このカードはNEXCO東日本など6つの企業が共同で発行しており、クレジット機能がないため、信用審査なしで発行されます。
これにより、ブラックリストに載っていてもETCを利用することが可能です。
ETCパーソナルカードの作成手続きは比較的簡単で、速やかに利用開始できます。
ETCパーソナルカードを使うことで、通常のETCカードと同じように高速道路の割引やマイレージサービスを受けることができます。
ただし、カードを利用するには以下の条件があります。
- 初めにデポジット(保証金)を預ける必要がある
- 年会費として1,257円(税込)が必要
- 通行料金は指定した銀行口座から1ヶ月ごとに自動引き落としされる
デポジットは利用する際の保証金であり、通行料金の支払いには直接使えません。
また、ETCパーソナルカードでの利用額はデポジット額までとなるため、デポジットを超える利用には一時的にカードが停止される可能性があります。
そのため、デポジット額は余裕を持って設定することをおすすめします。
例えば、平均利用月額が5,000円であれば、デポジットは20,000円程度必要になります。
これにより、利用額に応じた適切なデポジットの設定が重要です。
(3) 法人ETCカード/ETCコーポレートカードを作る
法人向けのETCカードである「ETCコーポレートカード」は、高速道路情報協同組合が発行しています。
このカードはETC専用で、クレジット機能は付いていません。
従って、クレジット機能がないため、法人独自の審査基準で発行されることが特徴です。
新設法人や開業したばかりの個人事業主でも発行可能で、多くの事業主が利用しています。
ETCコーポレートカードはNEXCO東日本、中日本、西日本が発行しており、「大口・多頻度割引制度」が適用されます。
この制度では、車両単位と契約単位の割引が組み合わせられ、利用者の高速道路料金を大幅に削減できます。
ただし、平日朝夕割引との併用はできないため、利用条件を確認する必要があります。
法人向けETCカードは、クレジット機能がない分、費用対効果が高いことが多いです。
(4) 家族カード付帯のETCカード
クレジットカードの審査が不安な場合は、家族カードを利用する方法もあります。
家族カードに付帯するETCカードは、本会員の名前で発行されるため、家族の信用情報は関係がないため、利用は可能なのです。
ただし、すべてのクレジットカードで家族カードにETCカードを付帯できるわけではありませんので、事前に確認が必要です。
また、家族カードの審査は本会員の信用情報に基づいて行われるため、家族カードが取得できない場合、ETCカードも入手できないことがあります。
なお、家族カードは面倒だからと、ETCカードそのものを借り受けてしまう人もいます。ですが、ETCカードの規則では「個人間での貸し借りは禁止」とされています。
つまり、家族同士であってもETCカードの貸し借りは規約違反となります。
そして、規約違反が発覚すると、ETCカードやその紐付けされたクレジットカードが解約される可能性があるため、避けるのが無難だと言えるでしょう。
(5) ETCカードの利用はあきらめる
最後に「債務者はETCカードを持たない、諦める」ということが挙げられます。
何の解決案にもなっていないと思うかもしれません。
ですが、クレジット機能付きのETCカードは後払いであり、実質的に借金なのです。
ETCカードを使わないことで、これ以上、借金を増やすことはなくなります。
「毎回一般レーンでお金を支払うのが手間だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、1、2分の手間を省くために、年間何万円もの金利を支払うことになってしまうのは、決して得策とは言えません。
借金と縁を切るためにもETCカードは使わないというのも、立派な選択肢なのです。
まとめ
任意整理をすることで、信用情報に影響が出ます。
そのため、ETCカードも利用が出来なくなるおそれはあります。
一方で、任意整理後にETCカードを利用する方法もあります。
ETCカードを利用するには、信用情報の回復を待つか、ETCパーソナルカードや法人ETCカードを作成する方法があります。
信用情報の回復には、任意整理で約5年、個人再生や自己破産で約7年かかります。
ETCパーソナルカードは信用審査なしで発行されますが、デポジットと年会費が必要です。
法人ETCカードは法人独自の審査基準で発行され、費用対効果が高いことが多いです。
家族カードに付帯するETCカードは、信用情報の心配が軽減されますが、規約違反には注意が必要です。
ETCカードを使わないことで、借金を増やすことはなくなりますが、金利負担を避けるために手間を省くのは得策とは言えません。
債務整理後のETCカード利用には、それぞれメリットとデメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。