返還請求できない
過払い金請求は、過去の高金利借入で支払った利息を取り戻すことができる重要な権利です。
しかし、全ての借入について過払い金請求ができるわけではありません。
借入時期や借入先、利息の種類などによって、請求の可否が異なります。
本記事では、過払い金請求が可能かどうかを判断するためのポイントと、請求ができない主なケースについて詳しく解説します。
過払い金請求を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
適切な判断を下すことで、無駄な手間や時間を省き、効果的に過払い金を取り戻すことができるでしょう。
過払い金返還請求が可能かどうかを決めるポイント
過払金とは、法律で許された利息を超えて支払ったお金のことを指します。
そして、過払い金の返還請求ができるかどうかはいくつかの要素によって決まります。
これらのポイントを理解することで、正しい判断ができるようになるでしょう。
請求する際には、これらの要素をしっかりと確かめましょう。
ポイント1. 借入の時期
まず、グレーゾーン金利が適用されていた時期が重要です。
2000年代初頭には、利息制限法と旧出資法の間に生じた「グレーゾーン金利」が問題になっていました。
2006年以前は、利息の計算に使われる金利について、「利息制限法」と「出資法」という2つの法律がありました。
この2法では金利の上限がそれぞれ定められており、利率に差がありました。
利息制限法の上限が15%から20%だったのに対し、出資法は29.2%でした。
つまり、利息制限法に基づけば違法、出資法に基づけば違法とは言えないグレーゾーンが存在していたのです。
このグレーゾーン金利で貸し付けを行う消費者金融やクレジットカード会社も多数存在していました。
ですが、2010年に改正貸金業法、改正出資法が施行されたことで状況が変わりました。
出資法の金利上限が利息制限法と同じ15%から20%に統一されたのです。
それだけではなく、今まで払いすぎた利息に関しては、返却すべきと決められました。
このように、借入時期によっては過払い金が大きく影響を受ける可能性があります。
例えば、2010年以前に消費者金融から借り入れをしていた場合は、当時の金利が高く、過払い金が発生している可能性が考えられます。
ポイント2. 借入の相手方
借入の種類や相手方がどこの業者かも、過払い金の請求可否に影響します。
まず、消費者金融です。
これら多くの業者が出資法を基準に利息を定めていることがほとんどです。
そのため、基本的には過払金が生じている可能性が高いと言えます。
また、クレジットカードの中にも、過払金が生じているケースがあります。
クレジットカードのキャッシングの金利が非常に高かったケースがあるのです。
一方、過払金が生じていないことが多い業者も存在します。
例えば、銀行や信金等の金融機関です。
銀行等は利息制限法を適用しており、金利が低いことが一般的でした。そのため、過払金が生じていることはほとんどありません。
また、クレジットカードのキャッシングには過払金が生じる可能性があると言いました。
逆に、ショッピング利用分は基本的に対象外です。
これらの利息も、利息制限法の範囲内であり、グレーゾーン金利ではありませんでした。
ポイント3. 金利が法定外か
過払金請求をするためには、法定の金利より高い利息をったことが必要です。
そのため、借入期間中の金利の履歴を確認する必要があります。
類型的には、金利が法定外であることが多いのは
- キャッシング
- フリーローン
- カードローン
といった名目の貸し付けであることが多いです。
一方、
- 住宅ローン
- 車のローン
- 学資ローン、奨学金
- 医療ローン
などの種類の借金は、一般的に利率が低く、過払金が生じていないことが大半です。
なお、取引間の年利は、業者の保有している取引履歴や契約書等に記載されています。
これらを相手方から取り寄せて、利率を計算する必要があります。
ポイント4. 返済状況
返済履歴の詳細を把握することは、過払い金返還請求において非常に重要です。
具体的には
- いつどのくらいの金額を返済したのか
- 借金が残っているのか
- 完済したことはないか
- 延滞や滞納があったか
どうかなどを確かめましょう。
例えば、返済が滞りがちな場合、過払い金の計算に影響を与える可能性があります。
また、過払金の時効は最後の取引からスタートしますので、完済歴も重要です。
これらを調べるためにも取引明細書などの取引履歴は重要な証拠となります。
このため、取引履歴をしっかりと管理し、必要な情報をすべて揃えることが重要です。
過払い金請求の時効について
上でも述べましたが、過払い金返還請求には時効があります。
最後の取引(通常は完済時)から10年が経過すると、請求権が消滅することがあります。
例えば、借入開始が1999年で、完済した日が2013年1月の場合、2023年1月には時効が成立する可能性があります。
そのため、完済過払を取り逃さないためにも、早めに行動することが大切です。
過払い金の請求は、特定の期間内に行う必要があるため、時効が来る前に確認を行いましょう。
返還請求できない主なケースとは?
過払い金請求は、過去の高金利の借入により払いすぎた利息を取り戻す手続きです。
しかし、全てのケースで過払い金が請求できるわけではありません。
以下に、過払い金請求ができない主なケースについて詳しく説明します。
これらのケースを知ることで、過払い金請求の可否を正しく判断できるようになります。
返還請求できないケース1. 貸金業法改正後の借入
2010年6月に貸金業法等が改正され、金利の上限が厳しく規制されました。
このため、この改正以降に借り入れをした場合、過払い金が発生する可能性は非常に低くなります。
したがって、2010年6月以降の借入については、過払い金の請求はほとんど期待できません。
例えば、2011年に借り入れを開始した場合、その借入について過払い金が発生している可能性は低いと言えます。法律改正により金利が適正化されているためです。
返還請求できないケース2. 利息制限法の範囲内での借入
利息制限法は、貸金業者が設定できる金利の上限を定めた法律です。
もし借入が利息制限法の範囲内で行われていた場合、法定利率を超える利息を支払っていないため、過払い金は発生しません。
このようなケースでは、過払い金の請求はできません。
返還請求できないケース3. 銀行等からの借入について
銀行からの借入、特に銀行カードローンは、一般的に利息制限法の範囲内で貸し付けが行われていることが多かったです。
そのため、過払い金が発生しにくい傾向があります。
ただし、銀行だから無理と言うわけではありません。適用されていたケースもあるため、履歴を調べることは非常に重要です。
返還請求できないケース4. 住宅ローンや自動車ローン
ローン契約の中には、通常、過払い金が発生するような高金利での貸し付けが行われていない者もあります。
例えば、マイホームのために利用した住宅ローンや、自動車購入のためのローンでは、過払い金は発生しないのが一般的です。
これらのローンは長期的な契約であり、金利も比較的低いため、過払い金の対象外であることがほとんどです。
返還請求できないケース5. クレジットカードのショッピング利用
クレジットカードのショッピング利用分は、一般的に過払い金の対象とはなりません。
例えば、クレジットカードを利用して家電を購入した場合、その代金はショッピング利用として扱われるため、過払い金の対象にはなりません。
過払い金が発生するのは、キャッシングなど現金を借りる行為が主な場合です。
そのため、ショッピング利用分のみの場合、過払い金請求はできないと考えられます。
返還請求できないケース6. 時効を迎えている
過払い金には消滅時効があります。
通常、最後の取引から10年以上が経過すると、過払い金の請求権は消滅します。
例えば、最後の返済が2012年の場合、2022年には消滅時効が成立する可能性があり、過払い金の請求ができなくなることがあります。
このため、長期間が経過している場合、過払い金請求ができなくなる可能性が高いです。
返還請求できないケース7. 借入先が倒産している場合
借入先の金融機関が倒産している場合、過払い金を請求する相手がいなくなるため、返還請求が難しくなります。
例えば、かつてテレビCMで有名だった貸金業者の中には、倒産したものも数多くあります。このような会社から過払い金を取り戻すことはほぼ不可能です。
返還請求できないケース8. 闇金からの借入について
違法な金利で貸し付けを行う闇金からの借入では、過払い金の返還請求はほぼ不可能です。
闇金は、そもそも法律を無視して活動しており、過払い金の返還に応じることはまずありません。
さらに、裁判で勝訴しても、闇金から回収するのは極めて困難です。
その返済分について過払い金を取り戻すことはほとんど期待できません。
法律を守らない相手からの回収は非常に難しいのです。
過払い金請求を検討する際の注意点
過払い金請求は、法律の知識が必要な複雑な手続きです。
ご自身で判断する前に、弁護士や司法書士に相談することを強くおすすめします。
専門家に相談すれば、個々のケースに合わせた適切なアドバイスが受けられ、過払い金請求が可能かどうかを正確に判断することができます。
例えば、借入が複雑で過払い金の有無が不明な場合には、専門家の力を借りることで、最適な解決策を見つけることができます。また、取引履歴を取り寄せ、引き直し計算を行ってくれます。
専門家は豊富な経験と知識を持っているため、適切な対応を提案してくれるでしょう。
まとめ
過払い金返還請求は、過去の高金利借入で発生した過剰な利息を取り戻す重要な権利ですが、全てのケースで請求できるわけではありません。
借入時期、借入先、利息の種類など、様々な要素が請求の可否に影響します。
中でも、貸金業法改正後の借入や利息制限法の範囲内での借入、消滅時効、借入先の倒産などは、過払い金請求ができないケースとして特に注意が必要です。
過払い金請求は複雑な手続きであるため、専門家に相談して適切な判断を仰ぐことが大切です。
ご自身の借入状況を確認し、過払い金請求の可能性について検討してみましょう。