任意整理と住宅ローン
住宅ローンが残っている状態で借金の返済に悩んでいる方は少なくありません。
自宅を手放さずに借金問題を解決する方法はあるのでしょうか?
そんな悩みを抱える方に向けて、この記事では住宅ローンが残る自宅を維持しつつ任意整理を行う方法について詳しく解説します。
また、任意整理後に住宅ローンを組む際の注意点まで、実践的なポイントを押さえています。
住宅ローンと任意整理の問題でお悩みなら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
住宅ローンが残る自宅を手放さずに任意整理を行う方法
自宅を維持しながら借金を完済する方法はいくつかあります。
住宅ローンの返済にお困りの場合でも、他の借入がなければ、金融機関と直接交渉するという選択肢があります。
これを、リスケジュールといいます。
リスケジュール(略称:リスケ)は、借入金の返済が困難になったとき、「一定期間だけ約定返済額を減額する」など返済条件変更のことをいいます。
具体的には、借入期間を延ばしたり、一定の期間だけ返済額を減らしたりすることを合意できる可能性もあるでしょう。
また、任意整理を行うというのも一つの方法です。
任意整理を利用すれば、住宅ローンを対象外とすることが可能です。
これによって、自宅を失わずに支払いを継続できるというメリットがあります。
以下で詳しく説明します。
住宅ローン以外に借金がない場合は、金融機関と交渉するのも選択肢の一つ
住宅ローン以外の借入がない場合であれば、リスケを検討してもいいでしょう。
たとえば、返済期間を長くしたり、一定の期間だけ返済額を減額したりすることが可能です。
これによって、一時的な経済的負担を和らげることができます。
ただし、借入期間を延長したり、完済までの期間が長くなると、その分の利息が発生することとなります。
そのため、トータルの支払額が増加するケースがあります。
また、リスケジュールを行う際は、金融機関ごとに条件が異なる場合があります。
例えば、返済額を減らす場合でも、金融機関が定める期間制限があることがほとんどです。
そのため、長期にわたって利用するのは難しいことがあります。
任意整理の対象から除外すれば住宅ローンに影響はない
ただし、他の借金がある場合には、リスケジュールが有効ではないケースもあります。
例えば、既に借金が数百万円ある場合に、一時的に住宅ローンの返済を減らしても、その間に借金を返済できる保証はありません。
このように、住宅ローン以外の借金もある場合は、任意整理を検討するべきでしょう。
任意整理を利用する場合、住宅ローンを対象から除外することが可能です。
これによって、住居を維持しつつ他の借金を整理することができます。
ただし、任意整理は借金の減額幅が比較的小さいというデメリットがあります。
そのため、任意整理で借金完済が難しいなら、個人再生等も検討するべきでしょう。
任意整理後に住宅ローンの利用は可能なのか?
借金を完済した後に新たに住宅ローンを組めるかどうかは気がかりなポイントです。
将来的に住宅ローンを利用できるのかどうかを不安に思う方は少なくないでしょう。
ここでは、任意整理後の住宅ローンについて詳しくご説明します。
住宅ローンの利用には厳格な審査をクリアする必要がある
住宅ローンを利用するには、厳しい審査をパスしなければなりません。
まず、金融機関に審査の申し込みを行い、事前審査と本審査の2段階を経て契約に進むのが一般的な流れです。
事前審査は簡易的なものですが、ここで不承認となると、ローン審査を進められません。
また、事前審査を通過しても、本審査で承認されるとは限りません。
正式な審査では、詳細な資料と共に、さらに厳重なチェックがなされます。
例えば、申込者の年収や頭金の割合、物件の金額。さらに、申込者の健康状態や信用情報も確認の対象となります。
特に信用情報に事故情報が含まれている場合は、審査通過が難しくなります。
住宅ローンは高額であり、安定した収入と長期的な返済能力が求められるためです。
では、任意整理を行わなければ住宅ローンの審査に通る?
では、任意整理を行わなければ住宅ローンの審査に通るのでしょうか?
確かに、信用情報に影響が出ていないのであれば、審査は通りやすそうです。
ただし、それだけでは審査をパスする保証はありません。
住宅ローンの審査はかなり厳格ですし、信用情報に現在の借入状況が記載されます。
すでに多くの借金がある場合、金融機関は新たな大口融資を躊躇するでしょう。
債務額が大きいと、返済能力に疑念を持たれる可能性が高いためです。
そのため、現在の借入金が多額である場合は、審査に通過するのは困難でしょう。
言い換えると、現在の借金額も住宅ローンの審査時の重要なポイントとなるのです。
ペアローンや夫婦での共同借り入れも難しい
近年、共働き夫婦が増加したため、夫婦で住宅ローンを利用するケースが増えています。
代表的な方法としては、ペアローンや収入合算があります。
ペアローンでは、夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを組み、たとえば夫が3,000万円、妻が1,000万円を借りるような形になります。
そして、お互いが連帯保証人になる必要があります。
一方、収入合算では夫婦や親子などの収入を合算して審査を受ける方法です。
なお、ペアローンでは複数の契約が必要となり、収入合算では同居の関係であることが求められるケースが多いです。
ただ、任意整理中である場合は、どちらの方法も利用できないかもしれません。
信用情報が審査に影響し、任意整理後の審査が難しい場合があるためです。
任意整理後に住宅ローンを組むためのポイント
ここまでは、任意整理前後の住宅ローンの借り入れは難しいということを解説しました。
では、少しでも住宅ローンを組める確率を高めるためにはどうすればいいのでしょう。
実は、任意整理後に住宅ローンを組むためには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、信用情報を回復することです。確かに、任意整理によって信用情報には悪影響があります。ですが、借金完済後、一定期間の経過で、この情報は消えることとなります。
さらに、信用情報以外の要素も重要です。
たとえば、安定した収入があり、十分な頭金を用意できると、審査に通過する可能性が高まります。
このように、信用履歴を改善し、安定した収入を示すことができれば、将来的なローン審査に有利に働きます。
また、収入の安定性や借入金額のバランスも審査の重要なポイントとなります。
以下に、任意整理後に住宅ローンを組むためのポイントを詳しく解説します。
信用情報の回復が重要
任意整理を行うと、信用情報に悪影響を及ぼし、住宅ローンの審査がより厳格になります。
信用情報を早期に回復させるためには、以下の方法が効果的です。
まず、借金を早期に完済することが大切です。
これにより、完済後、事故情報が消去されるタイミングを早めることができます。
次に、債務整理を行うことです。
債務整理を行うことで、確実に3~5年程度で借金は完済できる道筋が付きます。
そのため、無理に自力で返済を行うより、債務整理をした方が結果として早期に借金を完済できる可能性もあります。
早期の完済や返済実績の積み重ねることで、信用情報を改善することが可能です。
これらの行動を取ることで、信用回復の可能性が高まります。
安定した収入を得て生活を安定させる
住宅ローンを組むためには、安定した収入が不可欠です。
高額な借入金を返済するには、長期にわたって安定した収入と健康が求められます。
任意整理を行っている間に、生活を安定させ、収入を増やすことが重要です。
任意整理を行う理由としては、収入が低くて生活が苦しい場合や、無駄遣いが多いことなどが挙げられます。
この状況を改善せずに任意整理後も同様の生活を続けると、再び借金をしてしまうリスクがあります。
また、予期せぬライフイベント(子供の誕生、けが、離婚など)が起こる可能性もあります。
そのため、任意整理中に少しでも貯蓄を増やし、収入だけで生活できる状態を目指すことが大切です。
これによって、将来的に住宅ローンを組む際の審査に通過しやすくなります。
任意整理を行っていない金融機関を利用するのがおすすめ
信用情報はある一定の期間で消去されると言われていますが、「社内ブラック」という状態も存在します。
これは、以前にトラブルを起こした金融機関で再度借入れを申し込むと、融資を断られる状態を指します。
信用情報はある一定の期間経過後に消去されますが、社内の顧客情報は半永久的に保存され、情報開示もできません。
そのため、信用情報が改善された後に新たに借入れを検討する際は、以前に任意整理を行った金融機関ではなく、別の金融機関を利用することをおすすめします。
たとえば、A銀行で任意整理を行った場合、B銀行で住宅ローンを申し込むことで、審査に通過する可能性が高まります。
任意整理後の住宅ローン審査で重視されるポイント
住宅ローンを完済するときの年齢が重要
住宅ローンの審査では、完済時の年齢が重要なポイントとなります。
金融機関は貸し出したローンが完済されるリスクを考慮します。
完済時の年齢が高いと、病気や死亡のリスクが増し、審査がより厳格になる傾向があります。
以前は完済時の年齢が70歳前後を基準としていた金融機関もありましたが、現在は80歳前後に引き上げられていることが多いです。
それでも、年齢が高いと審査に不利になるケースがあります。
また、借入時の年齢も重要です。
若い年齢(20代前半〜半ば)の場合、将来的な収入の安定性が期待され、審査に通過しやすくなります。
一方、30代〜40代以上でフリーターや収入が不安定な場合、返済のリスクが高くなり、審査がより厳しくなることがあります。
特に将来の収入見込みや健康状態も考慮されるため、これらを改善するための努力が必要不可欠です。
雇用形態や勤続年数、業種も審査に影響
住宅ローンの審査では、収入の安定性が重視されます。
年収が高いことも重要ですが、それだけでは十分ではありません。
安定した収入があるか、将来にわたって維持できるかが評価の対象となります。
雇用形態や勤続年数、業種も重要なポイントです。
正社員や公務員は一般的に最も高く評価されます。
これらの雇用形態は離職率が低く、収入の変動が少ないため、安定性が高いと見なされます。
契約社員やパート・アルバイトは、雇用の不安定さから評価が低くなる傾向があります。
また、フリーランスは収入の変動が大きいため、審査がより厳しくなることがあります。
さらに、業種も審査に影響を及ぼします。
離職率が高い業種(飲食業や接客業など)や収入の波が大きい業種は審査に通過しにくいことがありますが、信用情報や家計収支に問題がなければ過度に心配する必要はありません。
ローンの返済状況、申込者の取引状況等の信用情報も重要
住宅ローンの審査では、他のローンの返済状況や信用情報が重要です。
延滞履歴や未払いがあると、信用情報に事故情報として記載され、審査がより厳格になります。
信用情報はある一定の期間で更新されるため、情報が削除されるのを待つことも一つの方法です。
また、申込者と金融機関との取引状況も影響を及ぼします。
申込者が所属する会社が金融機関と良好な取引関係を持っているか、申込者自身の金融機関での取引履歴が良好であるかも審査の対象となります。
長期間にわたって金融機関のサービスを利用している場合、審査で優遇される可能性もあります。
信用情報の改善や金融機関との良好な関係を築くことが、審査に通過するためのポイントです。
まとめ
住宅ローンが残る自宅を手放さずに任意整理を行う方法としては、他の借金がない場合は金融機関と直接交渉し、返済プランの見直しやリスケジュールを提案してもらうのが有効です。
一方、任意整理を利用すれば、住宅ローンを対象外とすることで自宅を維持しつつ他の借金を整理できます。
ただし、任意整理後に住宅ローンを組むためには、信用情報の回復、安定した収入の確保、別の金融機関の利用など、いくつかのポイントに注意が必要です。
特に完済時の年齢、雇用形態、信用情報などが審査で重視されます。
これらを踏まえて、計画的に信用回復に努めることが、任意整理後の住宅ローン獲得の鍵となるでしょう。