個人再生ができない
個人再生は債務の一部を免除してもらい、残りを分割返済する手続きです。
ただし、誰もが利用できるわけではありません。
例えば、安定した収入がない場合や、借金の合計額が5000万円を超える場合、過去に特定の免責や認可決定を受けている場合などは、個人再生の利用が認められないことがあります。
また、返済が可能だと判断された場合や、借金の減額が見込めない場合も、個人再生を利用できません。
本記事では、個人再生ができないケースについて詳しく解説します。
個人再生を利用できないケース
個人再生は債務の一部を免除してもらい、残りを分割返済する手続きですが、誰もが利用できるわけではありません。
いくつかの条件を満たさないと、個人再生の利用が認められないことがあります。
収入が安定していない場合
個人再生を利用するには、安定した収入が不可欠です。
以下のような収入状況だと、個人再生の利用が難しくなることがあります。
給与が不安定な人
個人再生では長期的な返済計画が必要なので、収入の安定性が重視されます。
そのため、会社員のように給料が大体一定の方などには有利に働く傾向があります。
一方、会社員の中でも歩合給の比率が高い方や、フリーランスや契約社員など、給与が不安定な人は収入が変動しやすいため、定期的な返済計画を立てるのが難しく、手続きが認められないケースがあり得ます。。
アルバイトで働いている人
アルバイトで生計を立てている人も、手続きが出来ない可能性があります。
収入が不安定なことが多いため、利用が制限される場合があるためです。
ただし、アルバイトだから必ず認可が下りないというわけではありません。
- どの程度の期間継続的に雇用されているか
- 期間限定のバイトではないか?
- 有期雇用の場合は、契約更新が前提とされているか
などの条件によって、裁判所の判断が異なる場合があることには注意が必要です。
年金を受給している人
年金受給者も、個人再生の利用が認められないことがあります。
特に、障害年金の場合は、安定的な収入と言われる可能性は低いでしょう。
その金額が個人再生の返済計画を支えるには十分でない場合があります。
また、年金受給者は将来的な収入増加が見込めないため、返済能力に限界があると判断されることもあります。
借金の合計額が5000万円を超える場合
個人再生は借金の合計額が5000万円を超えると利用できません。
そのため、借金の合計額が5000万円を超える場合は、他の手続きを検討しましょう。
【最低弁済額基準】
確定した借金の額 | 最低弁済額 |
100万円以下 | そのまま |
100万~500万円 | 100万円 |
500万~1500万円 | 5分の1 |
1500万~3000万円 | 300万円 |
3000万円~5000万円 | 10分の1 |
住宅を手放す場合は住宅ローンも対象に
個人再生には、住宅資金特別条項という特例があります。
つまり、住宅ローンのある住宅に関しては個人再生の対象から外して、居間窓通りに返済を続けることが可能ということです。
簡単に言うと、住宅ローンだけは特別扱いされるということです。
しかし、住宅を手放す場合はこの特例が適用されません。
結果、住宅ローンも他の債務と同様に再生計画に含まれます。
つまり、住宅を手放すつもりなら、住宅ローンを含めた全ての債務が再生計画の対象となるのです。
債権者の反対で、書面決議が否決された場合
個人再生の手続きでは、再生計画案を債権者に示し、その同意を得る必要があります。
これは、債権者に再生計画案を承認するかどうかを決定する手続きです。
これらの決議は書面によって行われます。
- 反対した債権者の人数が、総債権者の半数以上だった場合
- 反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合
という条件のどちらかに該当すると、再生計画は認可されません。
再生計画案が認可される場合
債権者 | 債権額 | 再生計画の賛否 |
消費者金融A社 | 300万円 | 反対 |
消費者金融B社 | 200万円 | 反対 |
クレジットカードC社 | 150万円 | 賛成 |
信販会社D社 | 100万円 | 賛成 |
個人E | 1000万円 | 賛成 |
計5社 | 計 1650万円 |
この場合、反対は5票中2票で過半数が賛成しています。
また、反対債権者の債権総額は500万円(約30%)です。
そのため、再生計画案の書面決議は可決されます。
反対した債権者の人数が、総債権者の半数以上だった場合
債権者 | 債権額 | 再生計画の賛否 |
消費者金融A社 | 300万円 | 反対 |
消費者金融B社 | 200万円 | 反対 |
クレジットカードC社 | 150万円 | 反対 |
信販会社D社 | 100万円 | 賛成 |
個人E | 1000万円 | 賛成 |
計5社 | 計 1650万円 |
この場合、反対した人数が5票の中3票が反対をしています。
ですので、反対した債権者の債権総額が650万円ですが、再生計画は否決されます。
反対した債権者の債権総額が総債務の半額以上だった場合
債権者 | 債権額 | 再生計画の賛否 |
消費者金融A社 | 300万円 | 賛成 |
消費者金融B社 | 200万円 | 賛成 |
クレジットカードC社 | 150万円 | 賛成 |
信販会社D社 | 100万円 | 賛成 |
個人E | 1000万円 | 反対 |
計5社 | 計 1650万円 |
この場合、反対したのは5票中1票だけです。
ですが、債権額の約60%を占めるEが反対をしているので、再生計画は否決されます。
過去7年以内に特定の免責や認可決定を受けている場合
個人再生手続きを利用するには、過去7年以内に特定の免責や認可決定を受けていないことが必要です。
以下のような決定を過去に受けている場合、再び個人再生手続きを利用することはできません。
(1)個人再生手続きのハードシップ免責許可決定
ハードシップ免責許可決定を受けてから7年以内は、給与所得者再生を申請できません。
ハードシップ免責とは、個人再生手続きの途中で予期せぬ事情により再生計画の遂行が難しくなった場合に、裁判所にハードシップ免責を申し立て、残りの返済を免除してもらう制度です。
認められるには次に掲げる条件をすべて満たす必要があります。
- 責任のない事態により返済ができなくなった
- 最低弁済額の3/4以上を返済している
- ハードシップ免責の決定が債権者の一般の利益に反しない
(2)給与所得者再生の再生計画認可決定
給与所得者再生は、安定収入のある給与所得者向けの再生手続きです。
この再生計画が認可されてから7年以内は、新たな個人再生手続きを利用できません。
過去に再生計画が認可されているということは、債務整理の履歴があるため、再度の利用には一定の制限が課されるのです。
(3)破産手続き免責決定
破産手続きで免責決定を受けた場合も、過去7年以内であれば個人再生手続きを利用できません。
免責決定は全ての債務を免除する強力な措置であるため、再度の債務整理を行うには一定の期間が必要とされます。
これは債務者の更生を促すとともに、債権者の権利を守るための措置です。
個人再生ができないその他のケース
個人再生は債務整理の有効な手段ですが、誰もが利用できるわけではありません。
以下のような理由で個人再生が認められないこともあります。
返済が可能だと判断された場合
個人再生は、債務の返済が難しい人を対象とした制度です。
そのため、現在の収入や資産状況から見て、返済が可能だと判断された場合は個人再生の手続きは認められない可能性があります。
借金の減額が見込めない場合
こじん個人再生の目的は、債務者の負担を減らし、返済を続けられるようにすることです。
しかし、借金の減額が見込めない場合は、個人再生は効果的ではありません。
例えば、高額な資産を持っている場合や、収入が十分あると見なされる場合には、個人再生による借金減額の効果があまり大きくありません。
このような場合、個人再生を行うメリットがないこともあります。
そのため、個人再生を行えない可能性があるのです。
まとめ
個人再生は債務の一部を免除してもらい、残りを分割返済する手続きです。
ただし、誰もが利用できるわけではありません。
安定した収入がない場合や、借金の合計額が5000万円を超える場合、過去7年以内に特定の免責や認可決定を受けている場合などは、個人再生の利用が認められないことがあります。
また、現在の収入や資産状況から返済が可能だと判断された場合や、借金の減額が見込めない場合も、個人再生を利用できません。
個人再生を検討する際は、これらの条件を満たしているか確認し、専門家に相談することをおすすめします。
個人再生が適さない場合でも、他の債務整理方法があるので、諦めずに最適な解決策を探ることが大切です。