自己破産
借金の返済に行き詰まり、自己破産を検討している方もいるでしょう。
自己破産は、裁判所の手続きを通じて借金の返済義務から解放される制度ですが、そのメリットとデメリットについて正しく理解している人は多くありません。
自己破産に関する誤解も少なくないのです。
ここでは、自己破産の手続きや、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
借金問題で悩んでいる方は、これらの情報を参考に、自己破産という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
自己破産はどんな手続き?
自己破産をすれば借金の返済義務がなくなる!
借金の返済に行き詰まり、他に解決策が見出せない人にとって、自己破産は、借金問題から抜け出すための有効な手段です。
自己破産では、裁判所に申し立てを行い、財産や収入の状況を審査してもらった上で、借金の一部または全額の返済を免除してもらえます。
例えば、失業や予期せぬ医療費の支払いで多額の借金を負ってしまい、返済が滞って借金がさらに膨らんでしまった人がいるとします。
そんな時、自己破産の申し立てを行い、裁判所の審査を経て免責許可を得られれば、借金の返済義務から解放され、新たな人生をスタートさせることができるのです。
自己破産が出来る条件とは?
- 支払不能であること
- 免責不許可事由に該当しないこと
- 非免責債権を除く借金であること
まず、現在の資産や収入では、将来発生する借金の全てを返済できない状態であること。
つまり、借金の額が膨大で返済の見込みが立たない状態であることが必要です。
また、財産の隠匿、虚偽の申告、破産手続きへの非協力など、免責が認められない事由に該当する行為をしていないこと。
これらの行為があると、裁判所から免責が認められません。
最後に、税金、社会保険料、養育費、損害賠償金、罰金など、自己破産しても返済義務が免除されない非免責債権ではないことが必要です。
非免責債権については、自己破産後も支払いを継続する必要があります。
自己破産のメリット・デメリットは?
自己破産のメリット
最大のメリットは、返済不可能な借金問題から解放されることです。
支払い能力を超えた借金に苦しむ人や、生活の立て直しを図りたい人にとって、自己破産は大きな助けになります。
また、手続きを開始すると、債権者からの取り立てがストップします。
そのため、精神的なプレッシャーが和らぐこともあるでしょう。
自己破産のデメリット
しかし、自己破産にはデメリットもいくつかあります。
まず、手続きが複雑で、財産の一部を手放さなければならないことがあるのです。
また、官報への掲載や職業、居住地に制限があり、生活に支障を来す場合もあります。
さらに、自己破産には他の手続とは違い、免責不許可事由が法律上定められています。
免責不許可事由とは、借り入れ理由が浪費や詐欺、ギャンブルであった場合や、裁判所に対して虚偽の報告があったなどの理由により、自己破産を認めないというものです。
加えて、自己破産をしても支払わないといけないお金があることも把握しておきましょう。
例えば、損害賠償や養育費、婚姻費用などは、免責の対象とはなりません。
さらに、一部の職業に関しては、手続き中には職業制限があることも見逃してはいけません。
例えば、警備員や保険外交員等は、手続中には資格を停止されることから、生活への影響がある場合もあり得ます。
自己破産がおすすめの人
自己破産は、以下のような状況にある人におすすめです。
- 借金返済の見込みがない、解決方法が見つからない
- 借金が高額すぎる(具体的には、1年分の年収を越えるほどの借金があるなど)
- 財産のプラスよりも借金のマイナスの方が圧倒的に多い
つまり、返済の見通しが立たない程の借金を抱え、他の解決方法が見つからない人に自己破産はおすすめなのです。
自己破産をすることで、借金問題から解放されることで、生活再建への第一歩を踏み出せるでしょう。
自己破産と他の手続の違いは?
自己破産の手順
(1)自己破産の申し立てまでの手順
まず、弁護士や司法書士に相談し、条件が合えば依頼します。
次に、弁護士や司法書士が債権者に受任通知を送り、取引履歴などを開示させます。
そして、取引履歴などを開示させたうえで、自己破産の申立に必要な書類を準備し、裁判所に申し立てを行います。
(2)同時廃止事件の場合の手順
同時廃止事件は、財産が債権者への分配に足りないほど少ない場合に選択される手続きです。破産手続きの開始と同時に終了するため、このような名称が付けられています。
同時廃止事件の手順は以下の通りです。
①破産手続き開始の申立て
弁護士や司法書士などの代理人が申立書類を準備し、裁判所に破産手続きの開始を申し立てます。
②裁判所による審査
裁判所は債務者の申し立てを吟味し、適切な手続きを決定します。
③裁判官との面接と免責審尋の実施
裁判官との面接が行われ、同時に免責審尋も実施されます。この段階で、債務者の財政状況や破産に至った経緯などが審査されるのです。
④同時廃止の決定
裁判所が同時廃止の手続きを選択し、破産手続きの開始と同時に終了することを決定します。
⑤免責許可の決定
裁判所が免責の許可を決定します。これにより、債務者は特定の借金の返済義務から解放されるのです。
同時廃止事件は、破産手続きの終了が早く手続期間が比較的短くなるのが特徴です。
そのため、債務者の財産状況などを考慮し、迅速に借金問題を解決するための手続きと言えるでしょう。
(3)管財事件の場合の手順
「管財事件」は、売却や清算の対象となる財産がある場合や、借金の経緯に問題がある場合などに選択される手続きですね。
①裁判官との面接
破産手続きの開始申立て後、裁判官との面接が行われます。この面接では、債務者の財政状況や破産に至った原因などが審査され、管財事件と同時廃止事件のどちらを選ぶかが決定されます。
②管財人の選任
管財事件が選択された場合、裁判所が管財人を選任します。
管財人とは、破産管財人として財産の評価や売却、清算などの処理を行う役割を担う人のことです。
③破産開始の決定
裁判所が管財事件の手続きを選択し、破産手続きの開始を決定します。
④管財人による調査の実施
管財人が破産者の財産の評価や売却、清算などの処理を行います。また、破産者に免責不許可事由がないかどうかの調査も行われます。
⑤債権者集会の開催
管財人による調査が終了した後、債権者集会が開かれます。この集会では、債権者に調査結果が報告されるのです。
⑥免責の許可
裁判所が債権者集会の結果を踏まえ、免責を許可するかどうかを判断します。免責が許可されれば、破産者は特定の借金の返済義務から解放されることになります。
このように、管財事件は同時廃止事件と比べて手続きが複雑で、時間もかかります。しかし、財産の適切な処理や、免責不許可事由の有無の確認などを通じて、公正な債務整理を行うための重要な手続きと言えるでしょう。