相続登記が義務化されたことをご存知ですか?
2024年4月1日から、相続が発生してから3年以内に相続登記を行わないと、最大10万円の過料が課されることになりました。
しかし、手続きの煩雑さや費用の問題から、相続登記を躊躇する人も少なくありません。
実は、相続登記を放置することで、所有者不明の土地になったり、固定資産税の支払い義務が発生したりするなど、さまざまなリスクが生じる可能性があるのです。
そのため、「相続人申告登記」や「相続土地国庫帰属制度」などの新制度を活用しつつ、適切なタイミングで相続登記を行うことが重要です。
この記事では、
- 相続登記の 義務化の概要
- 登記を行わないことのリスク
- よくある質問
などを詳しく解説します。
相続登記に関する正しい知識を身につけ、トラブルを未然に防ぎましょう。
相続登記の 義務化とは何か
相続登記の 義務化は、亡くなった人が所有していた不動産の名義を相続人の名義に変更することを義務付けるものです。この制度は2024年4月1日から開始されました。
なぜ相続登記が 義務化されたのか
相続登記が適切に行われないことで、所有者不明の土地や空き家が増加し、
都市開発などに支障をきたすことが懸念されていました。
国土交通省の資料によると、不動産登記簿で所有者が確認できない土地は全体の20.1%を占め、そのうち約67%が相続に関連する未登記の土地だったのです。
相続登記の 義務化の具体的な内容
相続登記の 義務化により、相続による所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を完了させなければならなくなりました。
また、複数の相続人がいる場合は、最後の相続人が知った日から3年以内となります。
この 義務化は既に発生した、過去の相続にも適用されます。
例えば、改正法施行後に、相続を知った日から3年以内に登記が必要です。
相続登記の 義務化における罰則
相続登記を3年以内に行わなかった場合、過料を科されます。
過料は相続登記義務を果たさなかった場合の罰金のようなものです。
相続登記を行わなかった場合、10万円以下の支払いを求められる可能性があります。
また、住所変更手続きの場合も同様です。
変更の手続きを行わないと、過料として5万円以下が課されることがあります。
新たなお助け制度「相続人申告登記」
相続登記の 義務化は、所有者不明の土地問題を解決し、土地活用のリスクを軽減することを目的としています。
そこで、2024年4月から、相続人申告登記が導入されました。
この制度では、相続人が遺産分割協議での難航を避けるために、登記の名義人に相続が発生し、自身がその相続人であることを証明すれば、登記官が登記簿に記載し、暫定的に相続登記の義務を履行したとみなされることとなります。
つまり、相続人申告登記は、相続登記の義務をより簡単に果たせるよう導入されました。
相続人申告登記の利点
この制度を利用するメリットは以下の通りです。
- 期限内に申請すれば、相続登記の義務を果たしたとされる
- 複数の相続人がいても一人で申請可能
- 戸籍謄本など必要書類が少ない
ただし、相続人申告登記は相続人を証明するだけです。
そのため、不動産の正式な名義変更にはなりません。
ですので、最終的には別途登記手続きが必要となります。
相続土地国庫帰属制度
また、価値が低く相続したくない土地を国に返却できる制度もあります。
新たに成立した相続土地国庫帰属法で定められた、相続土地国庫帰属制度です。
ただし、建物が建っている土地や土壌汚染のある土地などは申請できません。
また、土地審査の手数料や管理コストに基づいた負担金が課されるため、帰属可能な条件を事前に確認すべきです。
相続登記が行われない理由とそのリスク
相続登記が放置される主な理由は、手続きの煩雑さにあります。
必要書類の集め方や申請書の作成には厳格なルールがあります。
また、複数の役所を訪れたり、法務局に足繁く通ったりする必要があるため、時間と労力がかかります。
さらに、遺産分割協議が整わない、費用がかかる、義務化を知らないなどの理由で、相続登記が行われないケースも少なくありません。
しかし、登記を放置することで以下のようなリスクが生じます。
- 所有者不明の土地となり、活用が困難になる
- 固定資産税の支払い義務が発生する
- 不動産売却時のトラブルに巻き込まれる可能性がある
- 相続人間での紛争の原因となりうる
適切な相続登記を行うことは、所有権の明確化や土地の有効活用につながります。
そのため、相続人には迅速な対応が求められています。
相続登記にかかる費用の問題
相続登記には登録免許税や必要書類の手数料、専門家への報酬などさまざまな費用がかかります。
特に登録免許税は相続した不動産の評価額に応じて課税されるため、相当な額になることもあるでしょう。
資産価値の高い不動産なら、これらの費用を回収するために売却することも考えられます。
ですが、売却できない不動産の場合は相続登記にかかった費用が無駄になってしまう可能性があります。
相続人全員の関与が必要な点
遺言書がなく遺産分割協議で不動産の取得者を決める場合、相続人全員の合意が必要となります。相続人が少なく関係も良好なら問題ありません。
ですが、相続人間で意見が対立したり、手続きに非協力的な人がいた場合や、相続人が多く面識もない場合は、全員と連絡を取るだけでも大変な労力がかかるでしょう。
そのため3年以内に相続登記を申請するのが難しくなる原因となります。
相続登記に関するよくある質問
申請期限「不動産を相続したことを知ったときから3年以内」とは?
相続登記の申請期限は、自分が相続人であり、相続財産に不動産が含まれていることを認識した日から3年以内です。
つまり、自身が相続人と知っていても、不動産の存在を知らなければ登記義務は生じません。
ケースごとの申請期限は以下の通りです。
- 遺言書がある場合
遺言者の死亡と自身が不動産を相続したことを知った日から3年以内
- 遺産分割協議が成立した場合
協議成立と自身が相続人で不動産を相続したことを知った日から3年以内
- 遺産分割協議が不成立の場合(法定相続)
自身が相続人で不動産を相続したことを知った日から3年以内に
「相続人申告登記」を申し出る
その後、遺産分割協議の成立日から3年以内に相続登記を申請
過料を支払わないとどうなる?
過料は相続登記義務を果たさなかった場合の罰金のようなものです。
支払わなくても直ちに刑事罰を科されることはありません。
ですが、不動産やその他の財産が差し押さえられる可能性があります。
最終的には、強制執行の手続きにより過料が徴収されることになるでしょう。
そのため、過料の支払いを避けるためには、早急に相続登記を行うことが賢明です。
過料を払えば相続登記は不要?
「過料を払えば相続登記はしなくていいのか」と思う方もいるかもしれません。
ですが、過料を支払ったからといって相続登記の義務が免除されるわけではありません。
過料は相続登記義務を怠ったことへの罰則に過ぎず、不動産の所有権を正式に確定させるには相続登記を行う必要があります。
相続登記を行わないと、下のような問題が生じる可能性があります。
- 所有者不明の土地となり、有効活用ができなくなる
- 固定資産税の支払い義務が発生する
- 不動産売却時のトラブルに巻き込まれる
- 相続人間での紛争の原因となる
したがって、過料の支払いだけでは不十分で、きちんと相続登記を行うことが重要なのです。
相続放棄をした場合の相続登記義務
相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、相続登記の義務もありません。
ただし、次順位の相続人がいる場合は注意が必要です。
例えば、子が相続放棄した場合は直系尊属(親など)に、直系尊属が亡くなっている場合は兄弟姉妹などに相続登記義務が生じることになります。
相続放棄をしたからといって、必ずしも相続登記義務がなくなるわけではないのです。
まとめ
相続登記は不動産の所有権を明確にし、将来的なトラブルを防ぐために重要な手続きです。
また、放置することで所有者不明の土地になったり、税金の支払い義務が発生したりするリスクがあります。
さらに、相続登記義務化により、相続開始や所有権取得を知ってから3年以内に登記を行う必要があります。手
ですが、続きの煩雑さや費用の問題から登記を躊躇する人も多いです。
そこで、「相続人申告登記」や「相続土地国庫帰属制度」などの新制度を活用しつつ、できるだけ早く相続登記を行うことが賢明でしょう。
手続きが複雑な場合は、専門家に相談するなどして適切に対応することが肝要です。