個人再生は、借金問題を抱える人にとって、大きな助けになる債務整理の方法です。
裁判所を通じて行う法的整理の一種で、借金の一部を返済することで残りの借金を免除してもらえる手続きとなります。
任意整理とは異なり、利息だけでなく借金の総額そのものを減額できるため、大幅な借金の圧縮が期待できるのが大きな特徴です。
また、自己破産とは違い、ローンが完済している財産は売却せずに済むため、大切な財産を守ることができるのもメリットの一つといえるでしょう。
一方で、手続きが煩雑であることや、プライバシーが保護されないリスクがあるなど、いくつかのデメリットもあります。
ここでは、個人再生の特徴などについて詳しく解説していきます。
個人再生とは❓
個人再生とは、借金の一部を返済することで、残りの借金を免除してもらえる手続きを指します。具体的な流れとしては、借金を5分の1ほどに減額して返済する計画を立て、債権者に承認してもらった上で、裁判所がその計画を認可するというものです。
そして、返済が終了した時点で、残りの借金の支払い義務が免除されるのです。
個人再生は、裁判所を介して実施する「法的整理」の一つに分類されます。
任意整理とは異なり、裁判所を通さずに行うことはできないという大きな相違点があるのです。
また、任意整理は過払い金などが発生していない限り、借金自体を減額することができませんが、個人再生では元本自体を減額することができます。
個人再生ができる人の条件とは❓
小規模個人再生の条件
まず、個人であることが必要です。つまり、法人=会社等は利用できません。なお、法人には民事再生が別途用意されています。
次に、収入を得る見込みがあることが必要になります。
個人再生は、借金を減額して返すという手続きです。
返せる見込みがない場合には、手続きが出来ない可能性があります。
また、借金の総額が5000万円以下という条件もあります。
給与所得者等再生の条件
給与所得者等再生は、下記5つの要件を満たすと利用可能となります。
それは、給与または定期的な収入の変動が小さいということです。
また、小規模個人再生の条件を満たしていることも必要です。
個人再生のメリット・デメリット
個人再生のメリット
個人再生には、いくつかの利点があります。
任意整理と異なり、利息だけでなく、借金の総額そのものが減額されるため、大幅な借金の圧縮が見込めます。
自己破産とは違い、ローンが完済している財産は売却せずに済むため、大切な財産を守ることができます。
住宅ローンが残っている自宅を手放さずに、手続きを進められる点も大きな魅力といえるでしょう。
職業に関する制限がないため、仕事に影響を及ぼすことなく、手続きを進めることが可能です。
個人再生のデメリット
一方で、個人再生にはいくつかの欠点もあります。
手続きが煩雑であることが挙げられます。任意整理でも触れたように、裁判所に多数の書類を提出する必要があり、同居家族や勤務先からの書類提出も求められることから、家族や会社に内緒で進めることが難しい場合があります。
すべての債権者を公平に扱う必要があるため、特定の債権者(家族や会社、知人など)を除外することができず、個人再生の事実を隠すことが難しく、プライバシーが保護されないリスクがあります。
すべての債務整理に共通する点ですが、個人再生を行うと信用情報に傷がつき、将来の金融取引に影響を与える可能性があります。
個人再生特有の問題として、財産が多い場合は借金の減額幅が小さくなることがあり、借金問題の解決が困難になるケースがあります。
個人再生がおすすめな人
個人再生は、借金の減額幅が大きいことから、借金返済が困難な人におすすめです。
とくに、任意整理での返済見込みが立たない人は、個人再生を考えるべきでしょう。
また、個人再生では、ローンの残っていない財産は手元に残せます。
そのため、財産を持っており、手放したくないという方にもおすすめです。
さらに、自己破産のような免責不許可事由や職業制限等がないことから、
自己破産を取れない可能性がある方にも利用可能となっています。
個人再生と他の手続の違い
個人再生の手続きの流れ
個人再生の手続が完了するまでには、6カ月~1年程度の期間がかかります。
1.受任及び債権者への受任通知の送付
2.利息制限法による引き直し計算及び債務額の決定
3.申立書類の準備及び個人再生の申立て
4.個人再生委員と面接
5.再生手続の開始決定
6.債権届出
7.債権認否一覧表の提出
8.再生計画案の提出
9.再生計画案の決議
10.再生計画認可決定・確定
11.返済の開始
(1)個人再生申立までの手順
①最初に、弁護士や司法書士に相談し、契約を締結します。
②次に、債権者に代理人としての受任通知が送付され、債務者の財務状況の調査や過払い金の計算などが行われます。
財務調査が完了し、個人再生の申立書類の準備が進められます。
これには、家計の収支や所有資産の調査、それを証明する書類の作成が含まれます。
その後、申立てが管轄する地方裁判所に提出されます。
(2)個人再生手続開始後の手順
①再生手続きが開始
裁判所は、個人再生の申立てを受理すると、再生手続きを始動させるでしょう。
この時点で、個人再生委員が選ばれたり、履行テストが実施されたりする可能性があります。
個人再生委員とは、再生計画案を作ったり、申立人を支援したりする役割を担う人物であり、支払い能力の確認や面談などを行います。
また、履行テストでは、数カ月間にわたって、返済計画に沿った送金が裁判所にできるかどうかをチェックする手続きとなっています。
これらの手続きを終えると、個人再生手続きが本格的にスタートします。
ただし、裁判所によっては、代理人である弁護士や司法書士がついている場合、履行テストなどを省略して運用しているケースもありえます。
②再生計画案を提出
再生手続きが始まると、裁判所から金融機関に再生計画の開始通知書が送られ、債権者に対して再生計画案の提出が求められるでしょう。
これによって、債権額が確定し、再生計画案の作成が進められます。
再生計画案を作る際には、「最低弁済額」という、借金返済に最低限必要な金額を算出することになるのです。
③債権者による議決
再生計画案ができあがったら、次は債権者に対して、その案について決議するよう求めることになります。
これは、債権者が再生計画案に承認を与えるかどうかを決める手続きといえるでしょう。
議決は書面で行われ、以下のいずれかの条件を満たした場合、再生計画は認可されません。
反対した債権者の数が、全債権者の半数を超えている場合
反対した債権者の債権総額が、総債務の半分以上である場合
④再生計画案の認可
債権者による議決が可決されると、裁判所に再生計画案が提出される運びとなります。
そして、裁判所において、再生計画案の認可あるいは不認可が決定されるのです。
⑤再生計画の実行
裁判所で再生計画が認可された暁には、その計画に従って、債務者は各債権者への返済をスタートさせます。
返済期間は通常3年間とされています。