任意整理とは
任意整理とは、業者との交渉によって返済条件を有利に変更する手続きです。
例えば、利息をカットしたり、返済額を減らしたりする手続きです。
任意整理のメリット
任意整理を行うことによるメリットは以下の通りです。
- 利息がカットされる
- 原則3年間の分割払いになる
- 借金の元本を減額できる可能性がある
①利息がカットされる
弁護士が交渉を行うことで、将来の利息や遅延損害金を基本的にカットできます。
これにより、借金の元本のみを返済すればよいため、確実に借金が減少します。
②原則3年間の分割払いになる
和解後は、原則として3年の期間で元本だけを月々分割払いします。
これにより、毎月の返済額が無理のない金額に設定され、安定した返済が可能になります。
③借金の元本を減額できる可能性がある
過去の取引で違法な利息を支払っている場合(過払い金)、これを元本に充当することでさらに借金を減らすことができます。
つまり、その払いすぎた利息を元本に充当することで借金を減額できる可能性があるのです。
任意整理のデメリット
任意整理には便利な側面がありますが、以下のようなデメリットもあります。
- 事故情報(いわゆるブラックリスト)に登録される可能性がある
- ローン返済中の高価な品物が回収される可能性がある
- 連帯保証人が借金を肩代わりすることになる可能性がある
事故情報(いわゆるブラックリスト)に登録される可能性がある
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報として登録されます。
つまり、一定期間内は新しいクレジットカードの発行や車や住宅のローンを組むことが制限される可能性があります。
ローン返済中の高価な品物が回収される可能性がある
完済していないクレジットカードの分割購入やショッピングローンで購入した高価な物品がある場合、貸金業者によって回収されるリスクがあります。
これは、支払いが完了していない物品について、貸金業者が所有権を持つためです。
連帯保証人が借金を肩代わりすることになる可能性がある
借入契約時に連帯保証人を設定している場合、任意整理を行うと保証人がその借金を肩代わりする可能性があります。
特に保証人が家族や親族である場合、返済不能であることがバレてしまいます。
任意整理がおすすめな人
- 借金の返済条件を緩めれば返済が可能な人
- 安定した収入がある人
- 住宅や車を手元に残したい人
まとめ
任意整理のメリット | 任意整理のデメリット |
・毎月の返済額を減額できる ・財産を処分する必要がない ・手続きの負担が少ない ・費用が比較的抑えられる ・整理する債務を選べる ・借金の使い道を問われない ・職業や資格に制限がない ・他人に知られず手続きできる | ・元金の減額ができない ・返済の継続が必要 ・債権者と必ず合意できるとは限らない ・信用情報機関に事故情報が登録される |
個人再生とは
個人再生は、裁判所に再生計画の認可決定を受け、借金を大幅に減額してもらう手続きです。
例えば、借金額600万円の人が任意整理をすると、5年分割で月々約10万円の支払いが必要です。
しかし、個人再生の場合、借金は5分の1に減額されます。減額された借金をおおむね3年かけて支払うことで、残りの借金については、支払義務がなくなります。
そのため、借金は120万円に減額され、3年分割で月々3万円を支払えば良いことになります。
また、自己破産の場合は、一定の価値がある所有財産は清算、処分する必要があります。
しかし、個人再生の場合は、生命保険や車などの資産を清算せず手続きです。
さらに、住宅ローンが残っている自宅については、住宅ローンは自宅を処分する必要はありません。
個人再生のメリット
借金を最大で10分の1に圧縮できる
個人再生のメリットの一つに、借金を大幅に減額できるという点があります。
以下の表の内、最も大きな金額のものまで借金を減額出来ます。
項目 | 内容 |
---|---|
①負債額から算出する金額(最低弁済基準) | 負債額が100万円未満 負債額全額 負債額が100万円以上500万円以下 100万円 負債額が500万円超1500万円以下 負債額の5分の1 負債額が1500万円超3000万円以下 300万円 負債額が3000万円超5000万円以下 負債額の10分の1 |
②財産(清算価値)から算出する金額(清算価値基準) | 裁判所が「財産」と判断するものの価値の総額(例:車、住宅等) |
③収入から算出する金額 | 可処分所得の2年分の金額。 |
住宅を残せる
個人再生では、住宅ローン特則という制度を利用することで、住宅のみを対象から外せます。これにより、自宅はそのまま所有し続けられます。
支払いが終わっていれば自動車等の価値ある財産を残せる
自動車ローン等の支払いが終わっていれば、個人再生をしても、車を手元に残せます。
貸金業者からの催促が止まる
消費者金融やクレジット会社からの督促は、弁護士に依頼することで止まります。
貸金業法21条で、貸金業者は、弁護士や司法書士から受任通知を受け取った場合、それ以後本人に連絡することは禁止されているためです。
個人再生のデメリット
信用情報に個人再生手続を取った事実が載る
任意整理を取った場合でも同様ですが、信用情報に個人再生を取った事実が載ります。
個人再生を行った場合、クレジットカードを作ったり新たな借入れはできなくなります。
信用情報に登録後、5年は残るため、借入れができないという状況は変わりません。
ただし、個人再生の場合は、信用情報に、約5~10年は情報が登録されます。
ですので、任意整理より長期間、事故情報が残り続ける可能性もあります。
官報に掲載される
官報とは、国が発行している新聞のようなものです。
例えば、法律が制定された場合や裁判所の決定等を公告するものです。
個人の裁判内容なども掲載されることとなります。
ですので、個人再生手続を取ると、官報に、手続内容や名前・住所などが掲載されます。
ただし、一般の方がこれを見ることはほとんどありません。
お勤め先が定期的に官報をチェックしているような会社でない限り、これによって個人再生手続を取ったことが他の方に知れてしまうという可能性は低いと言えるでしょう。
返済を継続できる収入がないと、個人再生を利用できない
民事再生法には、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」がある場合に利用できる、と定められています。
ですので、収入が不定期だったり、失業中で、給与など定期的な収入が見込めない方は利用できません。
個人再生がおススメの人
- 多額の借金を抱えており、任意整理では支払えない場合
- 持ち家等、処分したくない財産がある場合
- 自己破産を行えない職業(保険外交員、警備員等)に就いている方
個人再生と任意整理の比較
違い①裁判所を使うか
個人再生は、裁判所を通して行う厳格な手続きであり、裁判所への書類や資料の提出が必要となります。
一方、任意整理は裁判外で貸金業者等と直接交渉する比較的柔軟な手続きです。
そのため、資料や書類の必要量は個人再生よりも少なく、短期間で終了する傾向にあります。
違い②借金の元金が減額されるか
任意整理では、将来の利息を削減することはできますが、元金を減らしてもらえるケースはあまり多くありません。
一方、個人再生では借金の元金が減額されるため、返済の総額は個人再生の方が減少しやすい傾向にあります。
違い③債務整理の対象を選べるか
個人再生では、住宅ローンを除くすべての借金を対象としなければなりません。
一方、任意整理では債務整理の対象とする借金を選ぶことができるというメリットがあります。
これにより、ローンが残っている自動車ローンや保証人がいる借金を対象から外し、それ以外の借金を整理するという方法が取れるため、柔軟性が高いと言えます。
違い④家族や保証人への影響の有無
個人再生では、保証人や家族への影響があることは既に述べた通りです。
一方、任意整理では上記のように保証人のいる借金を対象から外すことが可能であり、また、手続きに家族の協力が必要ないのです。
まとめ
まとめると、任意整理は減額できる幅が小さい反面、個人再生と比べると柔軟性が高く、家族や保証人、財産の差し押さえリスクなどを軽減しながら借金を返済しやすくすることができます。
そのため、借金があまり多くない方に適しており、自己破産や個人再生のように支払い不能に陥る前に取るべき手続きだと言えるでしょう。