借金の返済に行き詰まり、自己破産を検討している方もいるでしょう。
しかし、自己破産が認められるには、一定の条件を満たす必要があります。
収入や資産の状況、非免責債権の有無、免責不許可事由への該当性など、様々な要因が関わってきます。
また、手続きに必要な予納金の準備も重要なポイントです。
自己破産は、債務問題の解決策ではありますが、安易に選択できるものではありません。
本記事では
- 自己破産ができない場合
について、具体的なケースを交えて解説していきます。
支払い能力がある=自己破産の要件を満たさない
自己破産は、借金の返済ができない状況下でのみ認められます。
つまり、一定の支払い能力がある場合、自己破産の申請が却下されることになります。
ここでは、支払い能力があるとみなされるケースを具体的に見ていきましょう。
安定的な収入源がある場合
定期的な収入があり、生活費を賄いつつ借金の返済が可能と判断される場合は、自己破産が認められません。
例えば、会社員として毎月一定の給与を得ており、返済可能な場合です。
このような場合には自己破産をすることはできません。
一定以上の資産を保有している場合
返済に充当できる財産を一定以上保有している場合も、自己破産は許可されません。
例として、自動車や住宅がある場合や、有価証券、保険を持っている場合です。
これらの資産を売却することで、借金の返済が可能と判断されます。
そのため、財産を処分して得た資金を返済に充てることが要求されます。
非免責債権である借金
自己破産の手続きを経ても、返済義務が免除されない借金が存在します。
これを非免責債権と呼びます。
非免責債権に該当する借金については、自己破産後も支払いを続ける必要があります。
公的機関への未納金
税金、社会保険料などの未納分は、自己破産の対象外となる非免責債権です。
例えば、滞納している所得税や住民税は、自己破産後も納付義務が残ります。
子どもの養育費や婚姻費用
子どもの養育費は、親として支払う責任があります。(民法第766条)
例えば、離婚後に支払いが義務付けられている養育費等です。
これらのお金は、破産法上、非免責債権とされており、免除されることはありません。
そのため、自己破産後も継続して支払わなければなりません。
また、結婚生活を維持するために必要なお金も免責の対象になりません。(民法第760条)
例えば、家に入れる生活費等です。
故意または重過失に起因する損害賠償債務
交通事故などで他者に怪我を負わせた際に生じる損害賠償債務は、状況によって非免責債権とみなされる場合があります。
例として、交通事故で相手に怪我をさせた場合や他人の所有物を破損した場合です。
これらの債務については、自己破産後も支払い義務が残ります。
免責不許可事由に該当する行為
自己破産の手続きを踏んでも、一定の条件に該当する場合は免責が認められないことがあります。
これを免責不許可事由と呼びます。
以下のような行為が免責不許可事由に該当し、借金の免除が受けられなくなる可能性があります。
裁判所への虚偽申告
財産の隠蔽や収入の過少申告など、裁判所や破産管財人に対して虚偽の報告を行った場合は免責が認められません。
例えば、清算するべき価値ある財産があるのにないというようなケースです。
これら法律違反であり、自己破産の失敗と言う重大な結果を招くことになります。
浪費的な借金
ギャンブルや過剰な浪費によって借金を重ねた場合、免責が許可されないケースがあります。
例えば、高額商品の衝動買いを繰り返したり、パチンコ等で多額の借金を作ったりした場合は、免責の対象外となる可能性があります。
財産の隠匿や不正譲渡
破産手続き開始前に、財産を隠したり不正に他人に譲渡したりした場合も、免責不許可事由に該当します。
例えば、破産前に所有する不動産や車両を他人名義に変更する行為が考えられます。
特定債権者への優先弁済
特定の債権者のみに弁済を行い、他の債権者との公平性を欠いた場合も免責が認められません。
例えば、親族や友人への借金を優先的に返済することは、不適切な取り扱いとみなされます。
予納金の支払い困難な場合
自己破産の申立てには、一定の費用負担が伴います。
この費用を賄うための「予納金」の支払いが必要不可欠ですが、予納金が用意できない場合は手続きの開始が難しくなります。
予納金は裁判所の手続き費用に充当されるもので、これが支払われない限り破産手続きに入ることができません。
予納金の金額は申立て内容や地域によって異なりますが、通常は数万円から数十万円程度が必要とされます。
仮に予納金が工面できなければ、手続きは中断を余儀なくされ、債務問題の解決が遅延することになります。
したがって、自己破産の検討に際しては、予納金の準備状況も重要な判断材料となります。
まとめ
自己破産は、借金の返済が不可能な状況下で初めて認められる債務整理の手段です。
安定的な収入や一定以上の資産がある場合、自己破産の申請が却下される可能性があります。
また、税金や養育費などの非免責債権は、自己破産後も支払い義務が残ります。
虚偽申告や浪費、財産隠匿、特定債権者への優先弁済といった行為は、免責不許可事由に該当し、借金の免除が受けられなくなります。
さらに、予納金の支払いが困難な場合、手続きの開始が難しくなるため、予納金の準備状況も重要な判断材料となります。
自己破産は、債務問題の解決策ではありますが、様々な条件や制約があることを理解した上で、慎重に検討する必要があります。